2023-07-18

西永賢二・マイナビM&A社長に直撃!なぜ、マイナビがM&Aを手掛けるのか?

西永賢二・マイナビM&A社長

2021年にマイナビM&Aを立ち上げて以降、「なぜ、マイナビが?」というご質問をいただく機会が数多くありました。

 遡ると、マイナビは1973年に毎日新聞の関連子会社・毎日コミュニケーションズとして、社内ベンチャーのような形でスタートし、当時急成長していた就職情報産業に参入したのです。

 その後、バブル経済崩壊、日本の金融危機の中で就職情報一本足の危険性を感じ、そこで中途採用マーケットへの進出、派遣やアルバイト、人材紹介など人材関連のほぼ全ての領域に進出し「HR(人材関連事業)の総合商社」のような存在になったのが現在です。

 私自身、会社に入って30年以上が経ちますが、新人時代に回っていた企業さんを調べてみると、すでに存在していなかったり、5年前まで頻繁に求人広告を出稿していた企業さんが廃業されていたりということも現に起きています。

 マイナビには年間100万人以上の求職者の登録があり、様々な企業に送客しています。やはり送って終わりではなく、その後のフォローも必要なのではないかという問題意識がありました。企業さん、求職者のどちらも守る仕事が必要だと考えたのです。

 そのことによって企業さんが再成長できれば、そこにまたHRニーズも出てきますから、マイナビグループの中でのエコシステムが回っていきます。

 我々がM&Aにおいて特に大事にしているのはPMI(統合プロセス)です。M&Aの後には人の採用や組織の構築、給与といった「人」の問題が出てきます。また、売り主さんの社内はどうしても動揺しますから、そのエンゲージメントをどう測るかも重要です。

 この事業を始める前は、自ら仲介を手掛けるのではなく、既存のM&A仲介会社に案件を紹介するビジネスも検討しました。しかし、企業さんの成長支援、その後のHRニーズを満たすためには、自らM&A仲介を手掛けなければ社内にノウハウが蓄積しません。マイナビグループの顧客基盤を生かせば、我々自身でマッチングできるのではないかと考えました。

 マイナビに求人広告を出稿されている企業さんは潜在的にM&Aの買い手側になり得ますが、難しいのが売り手側の発掘です。奇策はありませんから、地道な、泥臭い活動を展開しています。

 ありがたいことに「マイナビならば、おかしなことはしないだろう」という信用・信頼をいただいていることは、活動の中で日々実感しています。

 社内の人材育成も課題です。M&Aの世界には、1つとして同じディールはありません。しかも知識以上に、中小企業の経営者の皆さんとのウェットな、人間的なつながりを持つことができるかといった「人間力」が問われる世界です。こちらが利益を求めて仕事をしていたら、すぐに見抜かれます。

 しかも、売り主、買い主だけでなく弁護士や会計士、金融機関といった専門家をまとめて、ゴールまで先導していくプロデューサー的役割でもあります。難しいですが、地道に社内で育てていきたいと考えています。

 当社にはマイナビのHR事業を通じて培った全国の金融機関との強い関係がありますから、この関係は今後、M&A事業を成長させる強みにもなります。

 現在は、人材を含め先行投資を進めている段階ですが、今後数年のうちに、ある程度の規模を持った企業に成長することを目指しています。

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