2023-12-18

大和総研名誉理事・武藤敏郎「日本と中国は『引っ越しのできない隣人』。厳しい局面でも、とにかく対話の継続を」

武藤敏郎・大和総研名誉理事




日本、中国の国民はお互いをどう見ている?

 ─ 日本は1人当たりGDP(国内総生産)で31位に落ちました。1位はルクセンブルク、2位はノルウェー、3位がアイルランドという小国ですが、これをどう考えればいいのか。

 武藤 そういう小国は税を安くすることで経済を活性化していますが、彼らと1億人以上の大国の経営は違う。

 ただ、シンガポールは実に上手ですね。シンガポール国内の人材だけではなく、中国やインドから来た人材も含め運営している。地の利や英語ができるといった環境の問題もあります。

 日本は戦後、経済成長で大成功しましたが、今は陰り始めています。これを何とかしなければ、長期的に陰り続けることになりかねません。

 私は日本を信じたいと思っています。ただ、イタリアのようにかつて栄えて、その遺産で食べているような国になってしまうことを恐れています。2050年までを展望すると、今のままではG7の中で実力的に下位になってしまうのではないかと。

 その意味でも日本は、中国との関係をきちんとしておく必要があると思っています。

 ─ 隣国である中国との関係は、日本の進路を左右する可能性がありますが、近年はなかなか微妙なものがあります。

 武藤 2023年8月から9月にかけて、日本と中国で世論調査が行われました。日本側で「中国をあまり好きではない」、「嫌いだ」という回答の割合は90%以上でした。また中国側は80%が日本を好きでない、嫌いだという回答でした。22年に実施した時には、お互いにもう少し低かったのですが、この1年間で悪化しているのです。

 一方、日本と中国の関係は大事だと思うかと聞くと、どちらの国も約6割の人が大事だと言っている。ですから、みんなわかっているわけですよね。

 ─ 日本には尖閣諸島や南シナ海を巡る問題、共産党の一党独裁体制といったことに対する懸念を持つ人が多いですね。

 武藤 中国は中国で、日本の尖閣諸島国有化、日本の政治家に右翼的な人がいて軍国主義的だという反発がある。これは認識のギャップです。お互いに言い分はありますが今回、東京電力福島第一原子力発電所の処理水問題と、中国の「新スパイ法」という新たな問題が出ました。

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