2024-02-07

《日本最大級の石油・天然ガス開発企業》INPEX・上田隆之の「天然ガスは移行期の重要なエネルギー」

上田隆之・INPEX社長



ネットゼロ5分野に約1兆円を投資



 そして、次に控えるのが、インドネシアでの『アバディLNGプロジェクト』。アバディはインドネシア語で〝永遠〟を意味する言葉で、LNGの年間生産量は950万トン規模を想定。イクシス以上に巨大なプロジェクトで、イクシスでの経験を活かして、2030年前後の生産開始を目指している。

 もっとも、同事業は本来であれば2020年代後半に生産を開始している予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染症の発生で作業中断を余儀なくされ、その後、共同出資していた英シェルが撤退した。

 同プロジェクトはINPEXが65%、シェルが35%を出資していたが、昨夏にシェルの持ち分全てをインドネシアの国営石油会社プルタミナとマレーシアの国営石油会社ペトロナスが取得。新たなパートナーを得て、巨大プロジェクトがようやく動き出そうとしている。

「イクシス頼みの一本足打法が二本足になるということで、会社としての安定性は増すし、利益貢献も期待できる。ここで生産したLNGは日本向けに加え、日本よりもLNGの需要が大きい、アジア向けが相当大きな比重を占めることになるだろう。需要確保という点で考えても、アジアのパートナーと組めて良かったと思う」(上田氏)

 ただ、天然ガスは石油に比べてCO2排出量が約7割程度になるとはいえ、CO2を排出するのは事実。長期的な脱炭素対応は不可欠で、同社が上流事業で手掛けようとしているのが、CO2を回収して貯留する「CCS」や、それに利用を加えた「CCUS」などの活用。イクシスもアバディもこうした技術を組み合わせることによって、掘削時に排出されるCO2を実質的にゼロにしようとしている。

 INPEXは2022年から30年度までの9年間に、3.8~4.4兆円の成長投資を予定している。大半は主力の石油・天然ガスで、最大約1兆円を再生可能エネルギーなどのゼロエミッション分野に投資予定。既存の石油・天然ガス事業でも前述したCCSやCCUSによってクリーン化を進めながら、水素やアンモニアの製造、再エネ分野を開拓していく計画だ。

「当社はずっと天然ガスを扱ってきたので、天然ガスをベースに水素をつくっていくことも考えている。もちろん、水素やアンモニア、再エネなどの技術開発やコストを下げる努力は最大限やっていくが、そう簡単には実現できない。やはり、天然ガスはエネルギートランジションの過程における重要なエネルギー。アジアにおける天然ガスの需要は根強く、しばらくはトランジション期間のエネルギーの主役の座を占めるのではないか」(上田氏)


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