2024-05-09

小宮山宏・三菱総合研究所理事長「成長している北欧の国には危機感がある。日本も高齢化、環境、雇用の観点で新たな社会像を」

小宮山宏・三菱総合研究所理事長




再生可能エネルギーと都市鉱山の活用を

 ─ 日本も少子高齢化、人手不足で苦しんでいます。

 小宮山 実を言うと、日本でも状況は同じです。移民ではありませんが「東京一極集中」の問題です。ここまで進んだら、地方は本当に立ち行かなくなります。しかし、日本には解決策はあると思っています。それが、私が提唱している「地球が持続し、豊かで、すべての人の自己実現を可能にする」プラチナ社会です。

 ─ 具体的には、どういう姿を目指していきますか。

 小宮山 再生可能エネルギー、都市鉱山(寿命のきたビルや自動車、家電、携帯電話、パソコンその他の製品から金属材料を回収し、再利用すること)、バイオマスの成長分を主な資源とし、すべての人が教え学びあい、健康寿命が生命寿命と一致し、文化が栄える社会です。

 今の日本における地方の衰退の本質は、第1次産業の衰退です。GDP(国内総生産)で言えば農林水産業は10兆円程度です。今、日本のGDPは550兆円程度ですから2%に満たないわけです。2%では地方を維持することはできません。

 今、日本は50兆円規模の資源を輸入しています。それを再生可能エネルギー、都市鉱山、バイオマスの成長分を利用することで、海外に支払っていたものが国内に落ちるようになる。10兆円の農林水産業が、60兆円の第1次産業に生まれ変わることができる可能性があるということです。

 ─ 地方には潜在力があるということですね。

 小宮山 それを顕在化させればいいんです。それによって過疎、少子化など地方の衰退に歯止めをかけることができます。

 2022年の日本の出生率は1.26ですが、東京だけを見ると1.04です。地方で生まれ育った人が東京に出てくると子供を産まなくなるということです。そうした国は希望がなくなりますから、出生率が1を割る世界になってもおかしくありません。問題は、それがわかっているのに、なぜ止める策を打てないのかということです。

 ─ 東京一極集中が少子化、日本の衰退を招いていると。その意味で、国のグランドデザインをどう描くかが重要ですね。

 小宮山 ええ。例えば、都市鉱山について言えば鉄、アルミニウム、銅といった金属は循環させれば十分な資源量があります。そうすると鉄は5分の1、アルミニウムであれば30分の1のエネルギーで再生することができます。

 省エネになりますし、金属を溶かす際のエネルギーに再生可能エネルギーを使えば、完全循環型社会を実現することができるということです。この姿を今後、世界も目指してくるわけですが、先んじて日本で構築しようということです。今、サーキュラーエコノミー(循環経済)が言われていますが、その最終形は再エネによる循環です。日本がこうした姿を実現するための活動を今、進めているのが「プラチナ構想ネットワーク」なのです。

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