2024-03-29

物流の2024年問題 中継拠点、置き配、連結トラック…… 運転手不足が迫る産業界の「課題解決能力」

中日本高速道路などが整備した「コネクトエリア浜松」



「所有」から「賃貸」へ

 高速道路会社による中継拠点は初めてのことだ。この中継拠点ができたことで、「ドライバーの日帰り勤務を可能になった」と関係者は話す。これまで東京から大阪まで荷物を運ぶ場合、1人のドライバーが約470キロを約6時間かけて走行。大阪での荷下ろしを終えた後に車内で睡眠をとり、新たな荷物を積んで東京に帰るという1泊2日が基本だった。

 しかし、東京から約224キロ、大阪の吹田から約245キロという中間地点に中継拠点ができたことで、大阪から来たトラックと東京から来たトラックが待ち合わせをして荷物を交換し、大阪から来たトラックは大阪へ、東京から来たトラックは東京の拠点へ、その日に帰ることができるようになった。

 22年度の延べ利用台数は約1万台だったが、23年度は1.2万台を見込んでいる。三菱倉庫とキユーソー流通システムが医薬品GDP(適正流通)に対応した専用車両を使用し、同拠点で中継リレー輸送を開始するなど活躍のシーンは増えている。

 自社の経営資源を活用するケースは他にもある。全国に約170棟の物流施設を開発・運営している日本GLPは「置き配バース」の提案を始めている。夜中など物流施設に従業員がいなくても荷物を格納できる「置き配の物流版サービス」(営業開発部部長の小鷲博之氏)だ。

 たとえ物流施設の営業時間外でも、トラック運転手がテンキーを操作して扉を開けて納品できるため、営業開始まで待機する必要がなくなると同時に、物流施設側にとっても庫内への搬送作業が不要となり、輸送コストの削減と効率化を促進する。導入している同社の広島県の施設では「夜中のパーツ搬送で活用されている」(同)という。

 荷主側も異業種タッグで工夫を凝らす。ファミリーマートがコカ・コーラボトラーズジャパン(BJI)とトラック物流で提携し、ファミマが非稼働時のコカBJIの委託トラックを活用。トラック1台当たり1割程度の稼働率向上を図る。

 また、大王製紙や日清製粉ウェルナなどは、荷物を載せるための荷役台(パレット)を使ってトラックに一括で荷物を積み下ろしする。大王製紙では手作業による荷役作業が2時間から30分程度に短縮できるという。

 トヨタ自動車グループのネクスト・ロジスティクス・ジャパンは40社を超すパートナーと荷物の最適な配車・積み付けを迅速に計算するシステムや1人でトラック2台分の荷物を運べる「ダブル連結トラック」で荷物の混載輸送や拠点での運転手乗り換えなどを組み込み、トラックの24時間稼働で協業する。

 物流現場の解決には現場の生産性向上が不可欠だ。日本GLP常務執行役員の藤岡洋介氏は「物流施設が〝所有〟から〝賃貸〟というトレンドに変化したように、当社のハードもソフトも月額で賃貸するという〝アズ・ア・サービス〟が1つの共通項になっている」と話す。

 単独で解決することができない「物流2024年問題」は業種の垣根を超えた連携や自社の経営資源の共有化など、これまでの自前主義からの脱却を迫る。柔軟な発想で新たなアイデアを生み出せるか。日本の産業界全体が問われている。

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