2024-04-01

森晋一・フィクス コミュニケーションズ社長「店頭データと地道な売り場づくり。店頭販促の成果を追求することが我々の仕事です」

森晋一・フィクス コミュニケーションズ社長

小売店舗に足を運ぶと、所狭しと様々なメーカーの商品が並ぶ。メーカーにとってはどれだけ売り場に自社の商品が並ぶか、どれだけ消費者の目にとまるかがカギとなる。ただ、メーカーの本業は売り場づくりではない。そこで売り場づくりを代行する企業がある。森晋一氏が創業したフィクス コミュニケーションズだ。同社は約150社から店頭販促関連業務を受託する店頭販促アウトソーサーの大手。売り場づくりには多くの女性スタッフが活躍している。そんな同社のビジネスモデルとは。

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店頭での販促活動を代行

 ─ メーカーに代わって店頭販促を行う事業を始めた経緯から聞かせてください。

 森 私は2000年に当社を創業する前までは、同様の事業を行う会社に勤めていました。さらにそれ以前は、業務委託スタッフとしてリアルな店舗を営業して回っていました。この頃から店頭販促アウトソーシングの業界に身を置いていたということになります。

 この当時、働くスタッフは業務委託で保険もつかないというのが業界の常識でした。契約社員でも保険をつけ、しっかりした雇用条件にすることで、仕事に対する安心ややりがいをもっと高められるのではないかと思っていました。従来とは違う労働環境を整備した形で事業を行いたいと思ったことが原点になります。

 もう1つ、2000年に当社を起業したわけですが、当時は今ほどデジタル化が進んでいませんでした。店頭の情報を数値化したり、Webで確認することはできておらず、現場を回るスタッフは、店舗の方と話した情報を、報告書にまとめて郵送やFAXで報告するといった時代でした。これでは活動成果が明確でなく検証もできません。ここも変えたいと思ったのが起業した大きな理由です。

 ─ 2つの思いがあっての起業ということだったのですね。

 森 ええ。勤めていた会社にもデジタル化の仕組みを提案したりしたのですが、なかなか実現しませんでした。そうであるならば、自分でやるしかないと。手掛けている業務は面白かったのですが、スタッフの労働環境を改善することも、店頭情報をデータ化することも、お客様の売り上げを上げることにつながり喜ばれると思いました。

 ─ 社名にもなっている「フィクス」の意味とは。

 森 造語です。フィールド、インフォメーション、ナレッジ、サプライの頭文字です。現場の情報や知識、ノウハウなどをお客様に提供していきたいという思いを込めています。そして、コミュニケーションは当社の肝でもある営業を意味しています。

 ─ では、御社の事業概要を聞かせてください。

 森 当社は店頭販促に特化した専門アウトソーシング会社として、メーカー様や小売業様をお客様にしています。

 メーカーが自社商品の売上拡大を目指すためには、チェーンごとの商談で決定した商品の取り扱いや様々な施策を全ての店頭で実現し、優位な売り場展開を徹底して継続することが重要です。しかし、そのためには多くの労力と手間が必要になります。

 そこで当社がメーカーに代わり店頭での売り場展開を行っています。当社のスタッフが直接店舗を訪問し、交渉して売れる売り場を作っていくわけです。

 対象店舗の選定や訪問頻度の設定といった業務設計、スタッフの採用や教育、メーカーから求められる指標や目標達成のための運営管理など、業務オペレーションを一括して対応できることが強みです。

 当社は現在、年間約150社から店頭販促業務を受託しており、70%以上の顧客企業に複数年にわたって業務支援をさせていただいています。さらに約4万2000店舗をデータ登録しており、2万7000店舗以上の巡回実績があります。


店舗には地域性や個性がある!

 ─ どのような業種からの受託が多いのですか。

 森 ほとんどが皆さんよくご存じのメーカー様です。日用雑貨品や食品、医薬、家電などです。一部小売業様ではスーパーやドラッグストア、専門店などの新店や棚替えの支援をしています。

 ─ この事業が成り立つ背景には人手不足もあるのですか。

 森 もちろん人的リソースが足りないという面もありますが、それ以前に、日本の商流通の変化があります。かつては卸店がお店に納品すると共に、陳列や棚の整備、商品に応じた様々な提案も行っていました。しかし、今は物流の効率化に注力していて、店舗への細かな提案や工夫を凝らした陳列は行えていません。

 ─ チェーン本部からの指示だけでは、店頭の売り場はうまくいかない?

 森 そうです。チェーン本部の仕事は棚割りや販売企画の立案が基本です。ただ、店舗に行くと分かりますが、決まった棚割りや企画を決まった通りに実施できていないケースがよくあります。お店によって特徴や事情も違います。このお店ではこういった商品が売れるといった地域性もあるのです。

 分かりやすくいうと、東京・渋谷の駅前のお店であれば女子高校生向けの商品を充実させるのでしょうが、住宅街のお店ではそういった商品ばかりでは来店客のニーズに応えることはできず、売り上げも増えません。

 各店舗で地域性や競合店も考慮しながら、その店舗に合った特色を出していかないと商品は売れないのです。

 ─ そのお店に応じた売り場づくりをフィクスコミュニケーションズが代行するのですね。

 森 はい。メーカーは全ての店舗で競合よりも良い売り場を作りたいと思うわけです。しかしながら、今の時代、メーカーも社員をたくさん雇用し、1店舗ごとに営業に行くというスタイルはとれません。小売業本部や卸店との商談が営業活動のメインなのです。

 したがって、どれだけ効率的にセールス活動をするかがポイントになります。そこで自社のコア業務以外は、当社のような専門会社に業務をアウトソーシングし、任せようとなるのです。もちろん、自社でやっている会社もありますが、直接雇用には様々な負担もあります。店頭対策はアウトソーシングするというのが今の流れです。

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