2024-04-17

ファーストリテイリング会長兼社長・柳井正「人間とは何か? 生きるとは何か? という本質的なことを勉強しない限り成果は出ない」

柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長



日本人はもっと学ばないといけない



 ─ これは人生の生き方とは何か? という根本的な問いかけにつながりますね。

 柳井 何かを達成しないと自分が生きた証にならないし、特に大企業に入るような人が将来、上司になる時に今のままでいいのかということですよね。

 なぜなら、自分個人だけではほとんど何もできないでしょう。だからこそ、仕事ができるように、成果が出せるように、もっと勉強して実践していかないといけないし、仕事というのは、自ら求めていかないといけない。

 でも、実際には求める態度が足りない人が多いと思います。口を開けて待っていても何も始まりませんし、企業経営者の中にもそういう人がいるのが残念です。

 典型なのが、アメリカでMBA(経営学修士)を取得してきたという人たちにありがちだと思います。さまざまな知識を知っているだけで、本当にそれらを実践できますか、ということですよ。実際には、実践できないことがほとんどではないでしょうか。

 ─ 知識の習得だけでなく、実行・実践が大事だと。

 柳井 例えば、日本の起業家は上場が目的の人が多いと感じます。上場してお金をつくって、それでおしまいです。でも、お金を手にしただけで、本当に幸福になれるのでしょうか?それだけでは幸福になれないのではないでしょうか。

 日本は極東の島国で資源らしい資源はじめ、ほとんど何もない国です。第2次世界大戦や明治維新の時のことを思ったら、そういう何にもないところからつくりあげてきたわけです。そういう危機感は常に持っておかないといけないし、日本で人材がダメになったら、日本は全部ダメになってしまうのではないでしょうか。

 わたしはよくゾウの話をするのですが、ゾウの尻尾だけを見ていてはゾウと想像できない。鼻だけを見ても想像できない。全体の姿があって、ゾウというものがあるのです。

 それを俯瞰的に、全体観をもって見るのが大事なので、世界とは何か? とか、人間とは何か? 生きるとは何か? 組織とは何か? そういう本質的なことを勉強しない限り、知識だけの単なる専門家にしかならないし、そういう専門家では成果が出ないと思います。

 ─ 柳井さんが1984年に広島でユニクロ1号店をオープンしてから今年で40年になります。今はどういう思いでいますか。

 柳井 そうですね。「生中生無 死中生有(生きようと思って戦えば生きることはできず、死を覚悟して戦えば生きることができる)」という言葉がありますよね。わたしも死に近づいて、そういう気持ちで生きないといけないのではないかと思っています。

 それぐらいの緊張感を持って生きているからこそ、生きているんだという気がしていて、これは元気に生きる秘訣の一つなのではないかと思います。

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