2024-10-04

西松建設社長・細川雅一「土木、建築の基盤事業に加えて、都市再開発や環境事業など新たな領域を開拓していく」

細川雅一・西松建設社長

「時代に合わせた企業戦略を打っていく必要がある」─西松建設社長の細川雅一氏はこう話す。2024年に150周年を迎えた、準大手ゼネコンの西松建設。長い歴史の中では、紆余曲折があったが、今は土木・建築の技術のみならず、都市再開発や環境事業など、それまでにはなかった事業領域を開拓。さらには資本提携している伊藤忠商事との連携でも新事業を探索している。細川氏が目指す企業のあり方とは─。


土木建築業だけでなく経営力が問われる時代

 ─ 西松建設は2024年、創業150周年を迎えましたね。細川さんは大きな節目で社長に就任したわけですが、150周年への思いから聞かせて下さい。

 細川 150周年記念式典も執り行いましたが、改めて西松建設の歴史を、自分なりに振り返る機会となりました。一言で言えば紆余曲折の連続です。

 創業者は今の岐阜県の安八郡に生まれました。その後、1900年代の初めに日豊線や肥薩線という九州の鉄道工事を手掛けたことをきっかけに、日本窒素(現チッソ)の野口遵さんの信頼を得て、国内外でダムや発電所など数多くの大型土木工事を手がけさせていただきました。

 戦後は、いい時期も悪い時期もありました。高度経済成長に伴い会社も右肩上がりに成長した時代もあれば、脱ダム宣言など、建設業を取り巻く社会環境が大きく変わった時期もありました。

 ─ 旧民主党政権による「コンクリートから人へ」というフレーズも業界に影響を与えましたね。

 細川 ええ。それもあり、弊社も早期退職、リストラを行うなど、それまで培ってきたものが崩れてきた時代でした。

 その後、11年の東日本大震災があり、国土の保全、安全、防災、減災といったことに建設業として貢献できる仕事が出てきました。そうした流れもあり、我々は建設業として事業を継続することができています。

 しかし今は、単に土木建築業を行って、PL(損益計算書)上で利益を出せばいいという時代ではなく、BS(貸借対照表)、キャッシュ含めた経営、人的資本、株主を含めたステークホルダーとの対話といった、経営そのものが問われる時代になっています。

 150年という当社の歴史の重みを感じながら、時代に合わせた企業戦略を進めていく必要があると考えています。

 ─ 土木は国土の強靭化やインフラの老朽補修、建築はコストと人の問題など、各部門の課題をどう見ていますか。

 細川 土木部門は、我々の得意とする、国内のトンネル、ダムなどの受注は計画以上に順調に推移しています。

 受注が順調な一方で、その施工管理ができる社員の数が足りなくなっています。ですから、ある程度案件を絞りながら新たな受注にチャレンジしていく必要があるということです。

「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」のような国策は、開始当初は順調でしたが、非常に前倒しで進んでいます。今後、次の国土強靭化策が、より具体的な形で出てくると思いますが、日本には地震などの災害も多いですし、この先の発注がどうなっていくかは不透明ではあります。

 建築部門は、物価上昇の影響がありました。一昨年、昨年とゼネコン各社も影響を受けて収益を落としましたが、当社で対策を取ったこともあり、今年度からは比較的改善できてきたのではないかと思います。収益面でも昨年より今年、今年より来年という形で伸びていくと見込んでいます。

 また今、他のゼネコンも一緒だと思いますが、建築の技能者のみならず、設備関連のサブコンも手一杯で回らず、仕事をお断りせざるを得ない状況になっています。

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