2021-06-09

ソニーがコンテンツ強化 ゲーム会員数を10億人へ

吉田憲一郎・ソニーグループ会長兼社長

「アニメのユーザーはゲームのユーザーと親和性が高い。コミュニティ・オブ・インタレスト、すなわち、感動体験や関心を共有する人のコミュニティを増やし、広げていく」

 こう語るのは、ソニーグループ会長兼社長の吉田憲一郎氏。

 ソニーが2021年度の経営方針説明会を開催。23年度までの3年間で2兆円の戦略投資枠を設定。これまでエレクトロニクス事業を中心に成長してきたソニーだが、経営における上位概念は“感動”と定義。有料会員数約2億人とされる米ネットフリックスや米アマゾンなどが立ちはだかる中、ゲームや動画配信サービスなどの会員数を現在の約1・6億人から10億人に拡大する方針だ。

2000年代に入ってからテレビ事業などの不振が続き、09年3月期から12年3月期まで4年連続の最終赤字を計上するなど、長く業績低迷に苦しんできたソニー。前社長の平井一夫氏と共に、構造改革にあたってきたのが吉田氏だった。

 同社は2014年にパソコン事業からの撤退、テレビ事業の分社化、そして無配という荒療治を断行。「わたしにとっては2014年の一連の施策が転換点だった」(吉田氏)。

ゲーム事業に代表されるよう、ハード機器を販売した後にコンテンツ販売で稼ぐ“リカーリングビジネス”にシフト。商品を買った後も継続して収益が得られる新たなビジネスモデルを構築。ゲーム、映画、金融、半導体と、複数の事業がバランス良く稼ぐ体制ができている。

 足元では、コロナ禍でも巣ごもり需要でゲームや音楽などの事業が好調で、21年3月期は初の1兆円越えとなる1兆1717億円の最終利益を確保した。

「社員一人ひとりの人生にとって、ソニーが情熱を傾けられる対象であるかどうかは決定的に重要だと思っていて、企業文化が社員の実行力を担保する。わたし自身、社員とのコミュニケーションには時間をつかうようにしている」と語る吉田氏。

 ユーザーの感動と社員の情熱をいかに掘り起こしていくか。今後の吉田氏の課題である。

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