2022-01-12

三菱UFJFG・亀澤宏規のデジタル提携戦略、新たな時代の金融インフラの姿とは?

亀澤宏規・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長



米地銀の個人部門売却、その資金の振り向け先は?


 近年進める構造改革も、デジタルも含めた成長の布石。21年9月、MUFGは米国の主力銀行・MUFGユニオンバンクの個人向け事業・中小企業向け事業を米地銀最大手・USバンコープに売却することを決めた。売却資金は約8800億円。

 MUFGユニオンバンクは近年、金融のデジタル化の荒波にさらされて米西海岸に約300カ所展開する実店舗が重荷となり、収益が低下していた。

 だが、「引き続き米国は我々にとって極めて重要な市場」(亀澤氏)。売却後も法人向け事業は継続し、米州事業の約7割はMUFGに残るため、個人向けに注いでいた経営資源を振り向け、モルガン・スタンレーとの協働を進める方針。

 また今回、USバンコープ株式(約2.9%)を取得する。保有比率は小さいが、USバンコープの株主はファンドで、事業会社として戦略的に保有するのはMUFGだけ。現在、業務提携を検討しているが、USバンコープはデジタル化で米国でも先端を行く銀行。人材を派遣するなどして、そのノウハウを吸収したい考え。

 ユニオンバンク売却で得た約8800億円をどう活用していくかも問われるが、亀澤氏は大まかに3分の1ずつに分けて投じていく方針を示す。

 1つ目は前述のUSバンコープ株式(約2750億円分)を取得して、その成長を取り込む。2つ目は自社株買いによる株主還元、3つ目は新規の成長投資という内訳。

 注目されるのは成長投資。すでに4カ国の地銀と資本関係を持つアジア圏や、アセットマネジメント分野、そしてデジタル分野がその候補になる。

 この売却資金の活用以前から、MUFGは新たな分野への投資を進めている。例えば、20年8月にはイスラエルのフィンテック企業・リクイディティーキャピタルと合弁で、アジアでスタートアップ向け融資を行う「マーズ・グロース・キャピタル」をシンガポールに設立。

 スタートアップ企業は基本的に赤字のところが多いが、銀行は赤字企業に融資するのが難しい。そこでファンドを立ち上げて、ユニコーン、ユニコーン候補に対して融資を提供していくビジネスモデル。3つのファンドに計500億円を投じる。

 与信判断は、イスラエルのリクイディティーキャピタルのAIを活用したモデルと、MUFGのノウハウを融合。決算書ではなく、ユーザー数の伸びや、サービスへの滞在時間、離職率などのデータを分析して融資の実行や停止を判断する。融資した企業が上場すれば、その成長を享受することもできる。

 今後、グローバルも含めた他社とのオープンイノベーションで、こうした成長分野を見極め、その果実を得ることができるかが問われる。

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