2022-05-20

【政界】緊急事態条項創設が焦点に浮上 参院選後に問われる岸田首相の『本気度』

イラスト・山田紳



「急がば回れ」の功罪

 自民党による野党の分断工作が奏功し、参院選の勝敗を左右する「1人区」(改選数1、32選挙区)で16年と19年に成立した野党共闘は今回、白紙に戻った。自民党は、選対委員長の遠藤利明の地元・山形で「不戦敗」が濃厚になるなど一部の選挙区を除けば、準備段階で野党に先行している。立憲民主党は比例代表で昨年の衆院選を上回る1300万票を目標に掲げて反転攻勢を図るが、現状では厳しい。

 原油高や物価高による経済の変調が与党の逆風になることを警戒し、岸田は3月、総合緊急対策の取りまとめを関係閣僚に指示した。22
年度補正予算案を編成し、今国会中の成立を目指す。

 選挙後も参院で改憲勢力が優位に立てば、改憲案を国民に問う時期がいずれ来るだろう。岸田の本心はなかなか漏れ伝わってこないが、自民党関係者は「岸田は改憲に意欲的だ。しかし、自分から発言するつもりはない。主戦場は国会の憲法審と考えているからだ」と代弁する。自ら旗を振った安倍とは対照的な手法と言える。

 ただ、改憲には大きな政治的エネルギーを要する。トップリーダーが静観したままで実現する保証はない。「急がば回れ」に自民党は我慢できるのか、それとも岸田がどこかでアクセルを踏み込むのか、そのとき公明党はどう反応するのか。

 ウクライナ危機下で「国とは何か」が問われている。侵攻するロシアに対してウクライナ人の「祖国を守る」という思いは強い。危機は突然訪れるだけに、日本の安全保障、引いては憲法改正論議でも〝国の運営〟という視点は欠かせない。いくつものハードルを前に、岸田の覚悟が問われている。 (敬称略)

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