2022-06-01

【政界】安定政権か、それとも衰退を辿るのか?7月の参院選で分水嶺を迎える岸田首相

イラスト・山田紳



示せるか外交成果

 緊迫するウクライナ情勢はもちろん、沖縄県の尖閣諸島の周辺海域で挑発的な活動を続ける中国や、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮などの脅威が増しており、野党にとって、積極的に首脳外交を重ねる岸田を批判しづらい。岸田にとっては、メディアに露出する機会が増えることから、自身が掲げる日米同盟関係の深化や「自由で開かれたインド太平洋」の実現をアピールする好機となる。

「厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、日本外交のしたたかさが試される1年になる」(1月の施政方針演説)と語っていた岸田。安倍晋三政権時代に約4年8カ月も外相を務め、外交は「得意分野」とされる。それだけに、ハイペースで展開する首脳外交で一定の成果を示せれば、引き続き安定した内閣支持率を続けることができる。

 だが、ロシアによるウクライナ侵略が始まった頃、日本国内でもエネルギーや穀物の価格に上昇圧力がかかることを見通せていたら、もっと早い時期に大胆な経済対策を打てたはずだ。補正予算案を巡っても迷走せずに済んだだろう。

 得意分野は「諸刃の剣」でもある。世論の追い風が期待できる一方で、上手くいくと確信していることでつまずくと、大きなダメージを受けることになる。

 様々な不安材料を抱えながらも堅調な内閣支持率を維持し、参院選に勝利すれば、岸田は大型国政選挙がなく安定した政権運営が可能になる「黄金の3年」と言われる期間を手に入れることができる。そのための天王山となる国会最終盤。

 長期政権となるのか、それとも衰退の一途を辿るのか。分水嶺を迎える7月の参院選を前に岸田の「SDGs」から目が離せそうにない。 (敬称略)

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