2022-07-01

日本取引所グループ・清田瞭CEO「企業の稼ぐ力を上げるために必要な3つのこと」

清田瞭・日本取引所グループ・グループCEO



市場再編に残された「経過措置」という宿題


 ─ 22年4月に東京証券取引所の市場区分が「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場に再編されました。これまでの経緯を聞かせて下さい。

 清田 18年頃から方向性を固めて、19年には市場再編の具体的内容がほぼ固まりました。当時はまだ、市場の名称は決まっていませんでしたが、4つの市場を3つに再編するという考え方はありました。

「プライム」は日本を代表してグローバルに活躍する企業の集まり、「スタンダード」は日本企業として十分な流動性と信用力のある事業規模だけれども、グローバルにはそれほど展開していない企業のマーケット、「グロース」は高い成長が期待されると同時にリスクがあるマーケットにしようということで議論を進めてきました。約3年かけて準備を進めて、22年4月からスタートしたわけです。

 ─ 例えば以前の東証1部に上場していた企業が「プライム」の上場基準に達していないといった問題もありますね。

 清田 ええ。市場再編以前は、東証2部やマザーズから東証1部に指定替えする際には、時価総額40億円以上であればよかったわけです。市場再編前までは時価総額40億円で東証1部にしていて、4月になって「ダメです」というわけにはいかないという声は強くありました。

 そこで、東証1部上場企業で、プライムの上場基準に達していない企業があっても、希望すれば残ることができる経過措置というものを設けたわけです。ただし、希望する場合には新たな上場基準に適合するために計画書を出してもらうこととしました。これはスタンダードも同様です。

 その結果、東証1部で約2200社が上場していたのに対し、プライムは約1800社まで減りました。当初から新たな上場基準を適用した場合、約1500社まで減る予定でしたから、約300社が経過措置で残ったのです。

 ─ この約300社の上場維持の見通しは?

 清田 少し努力すれば達成できそうだという会社がある一方、中には「これは難しいのではないか」という会社もあり、やはりプロの方々から見たら「なぜ経過措置なんて入れるんだ」というご意見もあります。

 しかし、これだけ大きな市場構造の転換をする時に経過措置、すなわち激変に対する特例措置を設けずに問答無用で移行するというのは、いくら取引所がそうしたルールづくりの権限をいただいていたとしても、それはやるべきではない。

 これは有識者会議でも、そういったご意見が出て、今の措置にさせていただいたわけですが、市場再編をした後の最大の問題として解決しなければならない宿題は、この経過措置を今後どうしていくかという点です。

 ─ 上場基準をどうしていくかも大きな課題ですね。

 清田 ええ。今回、自らがいつ上場廃止のリスクを負うかわからない企業が多く出てくるわけです。上場基準にギリギリで達した場合、翌期には上場廃止基準に抵触する恐れがあります。

 階段をせっかく一段上がっても、一段下がったらもうアウトという感じです。すぐに上場廃止のことを心配しなければいけないというような上場はしたくないということで、ある程度企業規模が大きくなるのを待って上場するという考え方を持つ企業は多くなっています。

 これは私の希望的観測ですが、一定以上の事業規模になるまでの間、非上場時点で資本が調達できるようなマーケットが発達する必要がありますし、つくらなければならないと思っています。

 また今回、上場しても上場廃止の可能性があるという点は、有識者会議でも様々ご議論いただく必要がありますが、仮に上場廃止になった場合でも、そうした企業に対する受け皿市場というのも議論をする必要があると考えています。

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