2022-07-22

〈経済安全保障の再構築〉国と企業はどう向き合うべきか?  答える人  明星大学経営学部教授 細川 昌彦



 ―― 岸田政権の看板政策の一つが経済安全保障政策で、5月の通常国会では「経済安全保障推進法」が成立しました。このこと自体はどう考えますか。

 細川 これはすごく大事な法律で、主に供給網(サプライチェーン)強化、基幹インフラの安全確保、官民による先端技術開発、特許の非公開という4本柱で構成されています。

 これは各メディアで報道された通りです。実はそれに加えて、先般出された「骨太の方針」では、さらに今後の新たな取組みが盛り込まれていることに注目すべきです。今の経済安保法の4本柱を「第一の矢」とすると、「第二の矢」と言ってもいい大事なポイントです。

 一つは日米欧による新たな輸出管理の枠組みをつくっていこうと。これは半導体製造などを念頭にしたものです。今まで国際的な輸出管理は30~40カ国が参加する国際レジームで議論していたんですけど、ロシアや技術に無関係な参加国がいると合意できないわけです。

 全会一致の合意でしか動くことのできないような国際的な枠組みというのは機能しなくなっている。だから、冷戦後にできた枠組みは古くなったので、今の地政学的な状況にあった形でつくり替えなければならない。

 ですから、輸出管理の新しい枠組みをつくるというのは大事なポイントです。

 ―― 輸出管理の枠組みというのは、今後の企業の国際的なサプライチェーンを考える上でも大事ですね。

 細川 ええ。二つ目は外為法(国の安全保障の観点から必要な場合に輸出入や投資を制限できる法律)に基づく投資審査。今は指定業種が狭すぎるから、これを見直して、半導体関連などの戦略業種を広げていく。虎の子の技術を持っている企業が技術入手を狙った中国企業に買収されたら困るので、対象となる業種を広げる方針でしょう。

 そして、三つ目が国にとって不可欠な技術を有する企業の資本強化を支援する。これは基幹技術を持った企業も資本力が弱い結果、買収の標的になりかねないので政府が資本強化の支援をするというわけです。日本のメディアはこんな大事なことをなぜ見逃して報道しないのかと首を傾げますが(笑)。

 経済安保法に盛り込まれた「第一の矢」の話はすでに多くを報道していますので結構知られていますが、今後の経済安全保障政策の肝を見逃してはいけません。これは日本が今、直面している深刻な問題で、とても重要です。

続きは本誌で

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