2022-07-29

ミライロ・垣内俊哉社長が提言、「改正障害者差別解消法」施行で企業が心すべきこととは?

垣内俊哉・ミライロ社長



対応を誤り炎上するケースも…


 ─ ある意味で民間企業にとってのリスクともなり得るということですね。

 垣内 それに対して我々はまず、有識者委員会を立ち上げ、民間事業者に対する啓発活動を行いました。障害のある方々、民間事業者に対してアンケートを実施し、「合理的配慮」が法的義務化されることへの認知度や、どのような対応が求められるかについての調査を行いました。

 調査の結果、障害者が「合理的配慮が不足している」と回答する一方で、民間事業者へは、そもそも義務化されることの認知が行き渡っていませんでした。これが一番の問題です。

 例えば、百貨店のアルバイトの方がペットと間違えて補助犬の入店を断ってしまい、ニュースになって炎上してしまったことがありました。また、レジャー施設で聴覚障害者の方のアトラクションへの乗車を拒否してしまい、公式ウェブサイトで謝罪する事態となり、SNSは炎上しました。

 ─ ネット社会の怖さですが、法的義務となると炎上するだけではすみませんね。

 垣内 ええ。今、世界的にビジネスと人権は切っても切り離せない状況になっています。障害者のことも、問題を起こせば機関投資家や消費者からの視線も厳しくなりますから、守りをしっかり固めることが重要です。

 米国では「ADA(障害を持つアメリカ人法)」という法律の存在もあり、障害のある方から企業への訴訟件数は右肩上がりで増えています。文化が違いますから、日本で訴訟が急激に増加することはないかもしれませんが、先程のネット炎上などレピュテーションリスクになります。

 改正法施行後、日本がユニバーサルな対応において遅れている国というイメージが拡がってしまう可能性もあります。そうならないよう、日本社会において、我々はしっかりと啓蒙活動をしていきたいと思います。

 ─ 個別企業での対応に加え、業界団体など全体での取り組みも必要になりそうですね。

 垣内 そう思います。いくつかの企業をヒアリングしても、個社の取り組みには限界があるという声はあります。ですから経済団体、業界団体とも連携して啓発・啓蒙していくことが重要だと考えています。

 ─ 逆に、ポジティブな事例というのは出ていますか。

 垣内 例えば、民泊のAirbnbは宿泊施設を探す際に、バリアフリー設備が整っているかといった情報を検索できるようになっています。障害者自身が泊まれるのかどうかの判断材料をしっかり提供するという姿勢が表れています。

 残念ながら、今の日本企業でこうしたことができている事例がどれだけあるかというと決して多くありません。飲食店サイト、宿泊サイトなどでバリアフリーかどうかは調べられますが、細かい条件がわからず、具体性がないというのが現状です。

 ただ、日本企業においてもいい事例があります。不動産情報のライフルホームズさんは、障害のある方の住まい探しのため、相談可能な不動産会社の検索機能を拡充しています。

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