2022-07-29

ミライロ・垣内俊哉社長が提言、「改正障害者差別解消法」施行で企業が心すべきこととは?

垣内俊哉・ミライロ社長



障害者に向き合うという意思を示すことが大事


 ─ 企業はまず、何から始めればいいと考えていますか。

 垣内 確かに、多くの企業さんで経営者、担当者の方含め、わからないことが多いと思います。そこで我々は「ミライロサーベイ」の開発をし、リリースしました。

 50から60問程度の調査票に回答していただき、それを元に現在の企業の障害者対応を可視化していくというものです。具体的には施設、製品、建物のユニバーサルデザイン対応、従業員の研修、ソフト対応、情報アクセシビリティといった項目でスコアリングをし、改正障害者差別解消法の施行までに、どのような対応が必要かのロードマップを描くためのお手伝いをしていきます。

 ─ こうした調査を元に、好事例が今後、多く発信されるといいですね。

 垣内 もっとそうした発信を増やしていかなければいけませんし、徐々に増えてきています。

 改めて考えてみると、障害のある方と一言でいっても状態は様々で、車椅子ユーザーで言えば、統計上約10%です。どの企業も、障害者対応イコール重厚なバリアフリーをやっておかなければいけないという思考停止に陥っているんです。

 確かに結婚式場や宿泊施設など、滞在時間が数時間に及ぶ場所では必要かもしれませんが、ラーメン屋さんやファストフードに必要かというとそうではありません。企業が提供しているサービスに合わせた形でコストを削減しながら障害者対応をやっていくべきだと考えます。

 例えば外食のロイヤルホールディングスさんには「天丼てんや」があります。この業態はファストフード的側面が強いですから、店舗のバリアフリー化は難しい面があります。

 ロイヤルさんはまず、バリアフリーができていることではなく、「完全にはできていないけれども来店はウェルカムです」という意思表示をすることにしたんです。それで始まったのが、外食産業初の障害者割引です。デジタル障害者手帳「ミライロID」を提示いただいた方は店舗での食事、テイクアウト共に10%オフになります。これによって、障害者の来店者数は年々増えているそうです。

 ─ 対応が完全でなくとも、向き合っているという姿勢を示すことが大事だと。

 垣内 そうです。示すだけで全く違います。できていることがどこまでで、できていないことがどれだけあるのかを、まず知ることが大事だという機運を高めていきたいと思います。

 改正法の施行期限まで、あと2年あります。それまでにしっかり発信をし、障害者対企業といった二項対立にならないよう、企業と障害者の架け橋になっていきたいと考えています。

 ─ 垣内さんは政府の審議会にも入って情報発信をしていますね。

垣内 はい。「国家戦略特別区域諮問会議」の議員を務めています。岸田文雄首相やデジタル庁の牧島かれん大臣、松野博一官房長官、野田聖子大臣も参加されている会議です。

 ただ、残念ながらこれまでの国家戦略特区として指定された自治体では障害者を主題としたものが少ないんです。今後、先行事例をつくっていかなければ他の地域に広げることはできませんから、今後は特区の中で進めていこうと。岸田首相はご理解がおありですから、前進することを期待しています。

 ─ 政治が意識することは非常に重要ですね。

 垣内 このテーマは与野党関係ないものですから一致団結しやすい。みんなで一緒に取り組んでいこうという流れがつくれるといいなと思っています。

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