2022-07-22

ヤマダHD・山田昇の『暮らしまるごと戦略』シナジー効果が出せる経営形態を!

ヤマダHD会長兼社長CEO 山田 昇氏

全ての画像を見る


「新型店舗は価格競争に陥らない」

 山田氏は創業者で、いわゆるオーナー経営者。日本ビクター(現JVCケンウッド)を退社して、1973年(昭和48年)、群馬県前橋市に個人経営の家電店を開いたのが始まり。
 それから49年が経った。この半世紀の間に、石油危機、バブル経済崩壊、ITショック、リーマン・ショック、東日本大震災、そして今回のコロナ禍と数々の社会変動、経済環境の激変があった。

 同社はその中を生き抜き、家電量販1位の座を獲得。
 全国規模でチェーン展開を図り、978店(今年3月現在)という販売網。この一大販売ネトワークの下で、コストダウンを図り、価格競争でも有利なポジションを築いてきた。
 しかし、かつての高度成長時代と違い、大量仕入れ・大量販売によってコストダウンを図るという経営手法だけでは今日通用しなくなってきている。

 コロナ禍で人々の生き方・働き方、そして価値観や消費行動も変わってきた。
 そうした世の中の変化に対応しての経営形態改革である。

 人口減、少子化・高齢化という人口構造の変化、家電市場のシュリンク(縮小)という状況下にあって、従来の値引き競争に終始していては互いに疲弊するだけである。

「当社が打ち出している戦略というのは価格競争にならないんです。新しい店舗開発は、あくまでも商品の品揃えの問題であり、サービスの問題であるということ。ここがポイントで、われわれは品揃えやサービスの面で圧倒的に強くなるんだということです」

 価格競争にならない体制づくりが大事だと山田氏は強調。

非デンキの住宅、家具や環境等をいかに伸ばすか

 コロナ禍は経済全体に影響を与え、さらにウクライナ危機で先行き不透明感が漂う。
 同社の2022年3月期の連結決算は売上高約1兆6193億円(前年同期比7.6%減)となった。
 営業利益は657億円(同28.6%減)、経常利益は741億円(同25.0減)、そして純利益は505億円(同2.4%減)。
 前期(2022年3月期)は会計法上の〝収益認識に関する会計基準〟が適用され、これにより売上減少分が約1040億円にのぼった。

 また、コロナ禍2年目での営業自粛が来店客数の減少につながり、前年度は巣ごもり需要があったものの、前期はその反動もあった。
 会計基準の変更がなく、前年度と同じ会計方式で算出すると、連結売上高は前年度比1.7%減になった勘定。
 ともあれ、経営環境が大きく変わってきたのは事実。

 家電に加えて、住宅・リフォーム、金融サービス、環境などの新領域開拓で新しい道筋を切り拓いていかなければならない。
 同社の売上高構成は、デンキ、住建、金融、環境、その他の5つのセグメント(区分け)になっている。

 2022年3月期の売上高は、デンキの家電部門(テレビ、冷蔵庫、エアコンなど)が約9375億円(構成比率54.4%)、同非家電部門(パソコン、パソコン関連、携帯電話など)が約3441億円(同19.6%)とデンキ部門が74%を占める。

 住宅・リフォームなどのセグメントの売上高は約2880億円で全売上高に対する比率は16・.7%。家具・インテリア類の売上高は約985億円で構成比率は5.7%という数字。
 デンキ部門は、山田氏が言うようにSPAとして自ら製品の企画を立て、独自の開発工夫で製造し、販売する形で収益を高めている。

 そして、非デンキの住宅・リフォームや家具・インテリアの事業拡大に弾みをつけて、リサイクルや環境事業に連関させていくことが大事。
 さらに、家電と住宅をセットしたローンの提案など、金融サービス部門も伸ばすという〝暮らしまるごと〟戦略である(銀行代理業の免許もすでに取得)。

〈編集部のオススメ記事〉>>【慶應義塾長 ・伊藤公平】の企業間、大学間提携の プラットフォームとして

本誌主幹 村田博文

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事