2022-07-22

ヤマダHD・山田昇の『暮らしまるごと戦略』シナジー効果が出せる経営形態を!

ヤマダHD会長兼社長CEO 山田 昇氏

全ての画像を見る


『暮らしまるごと』で粗利益を高める!

 山田氏の一連の改革は、業界のリーディングカンパニーとして、どう自分たちの将来をにらみ、手を打っていくかという点で注目される。

「今までうちは北海道から沖縄まで店舗をつくったわけじゃないですか。そうすると、(市場開拓は)一巡している。これ以上出店すると自社競合になって、経営効率が悪くなる。せいぜいやってSPAです。そういう方法しか取れない。その間、小売業の理論じゃないけれども、あとから追い掛けてくる連中がシェアを取るんです。小売業というのは、こういう構図なんです」

 山田氏は小売業がたどってきた歴史をヒモ解きながら語る。
そして、自社競合にならず、しかも単なるシェア競争に陥らないようにするために、『暮らしまるごと』戦略を進めてきたと強調する。

 家電主体の時、つまり今のセグメントでいえば、デンキ主体の時に売上高はピーク2兆円を超えた(2011年3月期に約2兆1532億円)。それが前期は1兆6100億円とピーク時より約25%減になった。

 ここから、どう巻き返していくか─という山田氏の問題意識。家電を中心にして、暮らしに関わるものは何でも提供していくという新戦略のポイントとは何か?
「最大の戦略は何かというと、モノを持っていないと、戦う武器がないと駄目なんです。最大の戦略は店舗開発ができるということ。小売業だから、売場面積イコール増収です」

 もちろん、DX(デジタルトランスフォーメーション)を付加しての店舗開発である。
「今度3000坪(約9900平方㍍)の大型店をつくると言えば分かるでしょ。家具・インテリアからリフォームから生活雑貨や玩具まで幅広く、暮らし全体に関わっていく」
 こうした『LIFE SELECT』店のメリットは何か?
「そうなってくると粗利ミックスになるんですよ。家具・インテリアは粗利が基本的に高い。家電は作ってもらったものを売るだけですからね。家具は利益率がぐんと高く、だから価格競争にならない部分がある」

 ライバルをどう見るのか?
「ライバルがやる対策は何かと言うと、価格しかない。仕返しに、徹底的に安くしようとする。しかし、それも長続きしない。客数が圧倒的に違うから。(ライバルは)対抗上、ただ粗利を削るだけで、経営の仕組みにおいてどうするかではなく、疲弊して、大体2か月で止めてしまう。価格を元に戻す。今はそういう現象になっている」

 山田氏はこう自社戦略と他社との違いを示しながらも、「もちろん、店舗のDX化を進めているし、価格もそれなりにマーケットと注視しながらやっていく。うちの商品は高くはないし、リーズナブルな価格。そういう範囲内で戦えているし、戦略が違うんです」と商品と価格の関係を強調する。

家電と非家電のシナジー効果は?

 では、家電と家具・インテリアなどとの連携、シナジー効果をどう打ち出していくのか?
「例えば、家具・インテリアは圧倒的にSPAであり、それにプラスブランドが必要なんです。これは大塚家具さんと組んで、世界のブランドを扱えるようになっていますから、その違いがあります」

 具体的に商品展開は?
「家具・インテリアでそういうことを言っても、その差は何かと言ったときに、ボリュームゾーン(売れ筋)が中心になるんですけれども、そこは電気屋だからできる商品開発をうちはやっています。例えば電動ソファとか電動ベッド、電動チェア、いろいろあるんですよ。いろいろな楽しみ方を提案できるということです」

 高齢者のための電動ベッドから、20代、30代の若い世代がベッドの上で本を読みたい、パソコンを使いたいといった需要の開拓、そして、子供のためのベッドやリビング設計まで提案していくという。
「店を見てもらえば、そのことが分かります。体験、体感型の店舗設計ですし、社員にもそのためのスキルが求められます」と山田氏は語る。

内外での試練を経て

 2023年に同社は創業50周年を迎える。
 その足取りを見ると、創業から16年後の1989年(平成元年)、株式をジャスダック(現東証グロース市場)に店頭登録。2000年に東証1部に上場。この間、1996年(平成8年)にインターネットサービスプロバイダー事業を開始(インターネット元年は1995年)。
 M&Aにも積極的で2002年、イトーヨーカ堂グループ(現セブン&アイ・ホールディングス)から家電販売のダイクマ株を取得した。

 全国展開にも意欲的で、首都圏では郊外に大型店を出店し、郊外から都市部に攻め入る形を取り、都心では『LABI』という都市型店舗を展開。
 2011年3月期には、先述のように国内の家電量販店で初めて売上高2兆円を突破(この時、世界で2位の売上規模)。この時点で〝次〟をにらみ、住宅メーカーのエス・バイ・エルを連結子会社化(2011)。

 さらに2012年12月、一時期家電量販トップに立ったベスト電器を子会社化。翌13年には、ダイクマとサトームセンを完全子会社化といったように、M&Aにも積極的に取り組んできた。
 売上高が2兆円に達した2011年3月期は、テレビ放送が地上デジタル放送へ完全移行する時で、家電エコポイント制度終了に伴う買い替え特需があって、売上高はピークに達した。

しかし、直後には試練もあった。アマゾンジャパンや楽天グループなど、ネット通販との競争争も激しくなり、業績も停滞。2015年には60店もの大量閉店に踏み切ったこともある。

 また、中国市場開拓に力を振り向けていたときに、尖閣諸島で事件が発生。中国漁船が違法操業の取り締まりに当たっていた日本の海上保安庁の巡視艇に衝突してきたという事件である(2010年)。
 日中関係が一時悪化したこともあり、結果的にヤマダ電機は中国国内で展開していた3店舗の閉鎖に追い込まれた。

「閉めるに当たって、日本へ来たい人は来てくださいと。それで国内で採用しました」と山田氏は中国人社員について、「優秀な人が多い。日本で学んだ人も多いですしね」と語る。

〈編集部のオススメ記事〉>>【学研ホールディングス・宮原博昭】の課題 教育・医療福祉に次ぐ3本目の柱の構築は?

本誌主幹 村田博文

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事