2022-08-22

【後発だからこそ新たな素材に挑戦!】製油業界3位・不二製油が展開する「植物性食品」戦略

不二製油グループ本社は肉や魚、卵、乳製品などの動物性食材を一切使わない植物由来(プラントベース)の食材だけで作られた食品群を増やしていく



後発組だからこそ……

 不二製油グループ本社の前身である不二製油は1950年に伊藤忠商事系の繊維商社の蚕糸会社から分離した植物系の油脂メーカーとして創業。同業には戦前からの大企業が多い中で、同社は最後発。「戦後、菜種や大豆などの主要原料は戦前の実績による割当制だったため、規模も小さい当社は原料を買おうにも買えなかった。そこで日本ではあまり使われていなかったパーム油に目を付けた」(大森氏)

 同社はこのパーム油から必要な成分を分離する、「分ける」という技術を磨き上げる。そして、その分ける技術が実ったのが大豆を低脂肪豆乳と豆乳クリームに分離する世界初の「USS製法」だ。これらの原料を使えば、飲料やクリームはもちろん、肉や魚にも似た食感を持つ固形食品も作ることができる。チーズのような豆乳クリームを使って乳・卵・小麦不使用のデザートが作れる。

 前社長の清水洋史氏はかつて「最後発の企業であるからこそ、他社がやってこなかったことをやらざるを得なかった」と語っていた。同社の製品はコンビニで販売されている麺類やおにぎり、アイス、インスタントラーメンなどに使われるBtoB向けの素材が大半を占めている。商品の前面には出てこない黒子のような存在だ。


プラントベースフードの製品群を発表する不二製油社長の大森達司氏(右)と不二製油グループ本社執行役員PBF事業部門長の鈴木清仁氏

 他にも、冷麺類の「ほぐし水」があるが、それも同社が手掛けている。大豆の「おから」から作った水溶性大豆多糖類で米飯や麺類の水分を保持し、粘りを抑える働きを活用している。「製品のコモディティ化とは一線を画しているため、コロナ前まで同業他社が営業利益率2%台だったのに対し、不二製油(植物性油脂事業)は10%弱と利益率の高さが際立っている」(食品業界のアナリスト)。

 ただ、原料となる大豆は米国やカナダなどからの輸入に頼らざるを得ず、価格高騰の影響も受ける。また、PBF自体の割高感も課題だ。大豆の国産化も国家的な課題と言える。

 同社はPBFを「挑戦領域」と呼ぶ。社会課題の解決をにらみながら、味に対しては保守的になる食品業界で新たな潮流を作れるかが勝負だ。

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