2022-09-13

【次世代太陽電池の本命】積水化学が開発する「ペロブスカイト太陽電池」の将来性

「ペロブスカイト太陽電池」は薄く、印刷するように製造できる



 前述のようにペロブスカイト太陽電池は日本の研究者が論文を発表した「日本発」の技術でできている。それまで太陽電池で実績のなかった積水化学がこの開発に取り組むきっかけは何だったのか。

「宮坂先生の論文、その後オックスフォード大学の研究から出てきた変換効率の数字を見て驚いた」と森田氏は振り返る。

 だが、試作したところ、全く耐久性がなかった。当時、積水化学は別の方式の超軽量太陽電池の可能性を探っており、その素材は耐久性は高いものの変換効率が低いという課題があった。

 変換効率か、耐久性か─。二者択一を迫られた時に封止技術、フィルム技術など、これまで積水化学が蓄積してきた技術を結集すれば、耐久性はクリアできると判断してペロブスカイト太陽電池の開発を決めた。

 だが、太陽電池の経験が少ないだけに、開発には苦しんだ。この世界は中国や韓国など海外勢との戦いになるだけに、そのための開発設備も必要になるが、まだ世の中にない”10年後の技術”のために投資するという決断は、経営陣にとっても簡単ではなかったからだ。

 それでも苦心しながら環境を整え、耐久性にこだわった開発を進めたところ、15年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトに参画することができた。

 当初は政府の太陽光発電普及に向けた補助金が終わるタイミングを目指して開発を進めていたが間に合わず。だがその後、2050年の「脱炭素」という追い風が吹いた。

 国内では他に東芝やアイシン、パナソニックホールディングスなども、この太陽電池の開発を手掛ける。「技術的にはライバルだが、次世代太陽電池市場は2050年に5兆円とも言われる。日本の市場を取り合うのではなく、日本企業で世界市場を押さえていきたい」と森田氏。

 海外のライバルは英国のオックスフォード大学発ベンチャー、エイチ・アイ・エスも出資するポーランド企業、中国勢。中国企業のペロブスカイト太陽電池関連特許は中国国内でしか出されていないだけに詳細は不明だが、国と一体になった投資でシリコン太陽電池では世界を席巻しただけに不気味な存在。

 ただ、設備がものをいったシリコン太陽電池に比べ、ペロブスカイト太陽電池は材料技術がカギを握るだけに、その技術を国内で守っていけるかも重要。

「〝地産地消〟のエネルギーとなる可能性がある太陽電池。ユーザーの皆様、社会全体で利用シーンを考えていけたら広がる可能性がある」(森田氏)

 近年、積水化学はゴミからバイオエタノールを製造、二酸化炭素を一酸化炭素に変えて有効利用するといった形で「環境」が事業の中心軸になっている。

 また、国や自治体とのさらなる連携の他、社内の住宅カンパニーなど他の事業部門との連携も深めていく。

 日本にとっても、国産技術、国産材料で実現できる製品として、世界標準となることができるかが問われる。

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