2022-09-22

【経団連会長・十倉雅和】の「成長戦略、分配戦略につながる人への投資を!」

日本経済団体連合会 十倉雅和会長

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成長戦略の根幹にGXを!

 エネルギー戦略は、日本の成長戦略と密接に絡む。2050年に地球温暖化(二酸化炭素)の排出ゼロを目指す─というのは菅義偉前内閣の時に決めた国の一大方針。
 脱炭素社会への転換を目指し、産業構造を変えていくGX(グリーントランスフォーメーション)。岸田政権はこのGXを日本の成長戦略に据えて、今後10年間で150兆円の投資が必要と試算し、このうち20兆円を政府支援にする考えを表明。

 経団連は4月下旬、このGXに向けて提言書を提出。これを受けて、岸田文雄首相も7月22日、経団連の夏季フォーラム(長野・軽井沢)で「実行推進担当相を新設する」と表明(GX担当相は萩生田光一氏から西村康稔氏に引き継がれた)。
 岸田首相は、脱炭素に向けて、「10年のロードマップを示していきたい」と意欲を見せる。

 一説に、20兆円のGX経済移行債(仮称)の発行を政府は検討しているといわれ、民間の長期巨額投資を引き出していく考えだ。GX推進へ、官民連携の流れはできつつある。

潜在力をどう束ねるか

 1つの方向性を見出せば、日本は目標へ向かって、まっしぐらに走り出す。要は、民間の潜在力をどう束ねるか─。
 経団連は日本の潜在力を引き出そうと、『バイオ』、『モビリティ』、『クリエイティブ』の3つの委員会を新設。

 バイオ産業は健康医療だけでなく、食料や環境、エネルギー領域にも絡んでくる。
 モビリティは、EV(電気自動車)や〝水素カー〟などがキーワードになっている今、人の移動や物流、搬送などでモビリティが社会の仕組み(インフラ)や経済発展にどう関わっていくかといった課題に取り組む(委員長にトヨタ自動車社長の豊田章男氏)。
 また、ゲームやエンターテインメント分野の成長・発展に取り組むクリエイティブエコノミー委員会も設置。日本経済もサービス・ソフト分野が全体の7割を占め、いかにこのサービス・ソフト分野の生産性を高めるかが日本の成長の成否にも関わってくる。

なぜ今、「人への投資」なのか

『新しい資本主義』論が盛んに出される。このことについて、十倉氏は「資本主義とか市場経済が一般論でなぜいいかと言えば、資源配分と人材が伸びる分野にパッと配分されるところによさがあると思います。ところが、日本はそうはなってないのが現状。だから労働の流動性が足りないというのが問題になっている。昔は日本の資本主義のいいところでもあったんだけど、(戦後は)終身雇用で安定を求めてやってきた」と語る。

 労働の流動性をどうつくり出していくか?

「これから新しい科学技術も生まれてきて、新しい産業が登場してくる。ましてやスタートアップを育てようとする、人々の自由な移動というか、労働の流動性は大前提になるし、それは実現しなければいけない。何よりももっと主体的に動く個人というか、個性を育てていくということも大事になってくる」

 厳しい国際競争下をどう生き抜くかという課題。
「自己の意見や国益をしっかり主張してくる国際社会を生き抜くには主体性が求められる。主体性が発揮できれば、自分の個性を訴求する人が出てきて、そういう社会になれば、失敗しても、その失敗でその人の人生は終わらない。日本には〝七転び八起き〟という言葉があるけれども、今の実態は〝一転びゼロ起き〟ですね」

 では、社会の空気をどう変えていくか?
「僕はいつもグッドルーザーとファーストペンギンという2つの言葉を使っているんです。まずは真っ先に自分が飛び込んで行くという精神の人ですね。そのためには自分の主体性を持った人を育てていかなければならないし、失敗しても、よくやったと、失敗で箔が付く位の雰囲気づくりが大事」
 中途採用が増え、ジョブ型採用が出始めるなど、産業界の改革機運は盛り上がっている。
 最後はやはり、『人』である。「持続的な賃上げを含めて言うと、岸田総理もおっしゃっている人への投資だと思うんです」

 十倉氏はこういう考えを示し、「人への投資は、成長戦略であると同時に分配戦略にもなります」と強調。

 日本には潜在力がある。
「ええ、日本は本来、みんな勤勉だし、他人に対する思いやりがある。コロナ対策でもそうだし、そういう日本のいいところを、内にこもるのではなくて、外に向かって発揮していきたい」と十倉氏。
 課題解決へ、まっしぐらに走るときである

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本誌主幹 村田博文

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