2022-11-30

【不動産クラウドファンディング】横田大造・クリアル社長 「敷居の高かった不動産投資を、ITの力で身近なものにしていく」

横田大造・クリアル社長



保育園の案件は20秒で投資枠が埋まる


 ─ こうした形で、自分で資産運用をするという人達が増えてくる可能性がありますね。

 横田 そう思います。「失われた20年」と言われた中で、株価も下がり続けており、資産運用による成功体験がない方が多かったと思いますが、この10年でかなり風向きが変わったと思います。我々のような資産運用業にとっては追い風を感じます。

 個人金融資産2100兆円のうち、現預金が約1100兆円ですが、この1100兆円を動かすような魅力的な資産運用がなかったと思うんです。株式はハイリスク・ハイリターンですが、投資単位が比較的低い一方、不動産はミドルリスク・ミドルターンで、安定的ではあるものの大きな資金が必要でした。

 我々はITを使って、1万円から誰も気軽に、透明性がある中で投資ができるようにしている。眠っている1100兆円を動かすようなシステムをつくっていきたいと考えています。

 ─ これまでの中で印象的な案件はありましたか。

 横田 投資案件の中に「保育園」がありました。東京都内で待機児童の問題は解消しつつあると言われながら、場所によってはまだ問題を抱えているところもあります。都内の待機児童問題など、社会問題の解決を不動産の側面で支援する投資が非常に人気があるんです。

 この保育園プロジェクトは1億7000万円資金の募集でしたが、わずか20秒ほどで枠が埋まってしまいました。社会課題解決、かつ資産運用に資するようなものは、今までなかなかなかったと思います。

 こうしたESG不動産投資の案件は、我々にとっても意義のあるものだと考えています。ただ、こうした案件は規模が小さく、投資対象としても新しいですからなかなか機関投資家さんは入りにくい。

 それをクラウドファンディングを使うことで、個人の共感を含めてお金を集めて、ソーシャル・グッドを実現しつつ、資産運用にもつなげることができます。こうした案件は今後もどんどんやっていきたいと思います。

 ─ 保育園は少子化ですが、高齢化に対応した老人福祉施設などは投資対象になりますか。

 横田 当社は機関投資家といったプロ向けサービスとしてすでに私募ファンドでは有料老人ホームや病院といった大型の施設で投資トラックレコードがあります。ただ、グループホームなど小型の施設は流動化できずに資金の担い手が足りない状況ですから、クラウドファンディングで検討していきたいと考えています。

 他にもESG不動産投資関連で言えば、太陽光発電のなどの再生可能エネルギーは避けては通れません。小型の太陽光発電施設もクラウドファンディングで手掛けていきたいと思っています。

 ただ、この分野は免許法上の問題があります。我々は国土交通省の「不動産特定共同事業法」という不動産に特化したライセンスを取得しています。太陽光はどちらかというと「動産」ですから、新たなライセンスが必要になります。今この取得に向けて準備をしています。

「クリアなリアルエステートを」


 ─ 改めてお聞きしますが、クリアルという社名に込めた思いを聞かせて下さい。

 横田 クリアルの由来は、我々が追い求めている「クリア・リアルエステート」から来ています。情報を全てフルオープンにして、皆様にその情報を判断していただく。不動産投資の見えなかった部分を、全てオープンにしようという思いです。

 おかげ様で上場を経て、採用面にも好影響が出ています。これまでも非常にいいメンバーが採用できていましたが、より広い業種からのお問い合わせが増えてきています。

 ─ これから会社はどういう方向に向かっていこうと考えていますか。

 横田 我々のミッションは「不動産投資を変え、社会を変える。」です。不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンで、大手の機関投資家さんはどこもポートフォリオに組み入れて資産運用をしてきたと思います。

 ただ、個人にとっては資金や情報が足りないという障害がありました。そこをITの力で、誰もが気軽に不動産投資をできるようにする。それによって投資を国に根付かせる、それは社会を変えることにつながるという思いで仕事をしています。

 ─ 改めて、不動産投資のよさをどう訴えていますか。

 横田 不動産投資は賃料、キャップレート(期待利回り)と、変数が非常に少ないんです。ですから、変数が多い株式投資に比べてリターンが非常に安定していると思います。

 そういった背景から、不動産投資を安定した資産運用の一手段として個人にも根付かせていきたいと考えているんです。そして今後さらに、先程申し上げた太陽光など、不動産ではない資産にまで投資対象エリアを広げていきたいと思います。

 このように我々は資産運用を日本に根づかせることができるようなサービスを展開していきたいと考えています。

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