2022-12-01

五十嵐正明・SBI損保社長 「テクノロジー、他社との連携を生かして、メガ損保にはないサービスの提供を」

五十嵐正明・SBI損害保険社長



ブランド力向上に向けて


 ─ 他社にないサービスで差別化していくと。

 五十嵐 そうです。ただ、こうしたサービスを知らない方もまだまだ多いのも現実で、インターネットだけでは難しいと感じています。

 これまで我々はインターネットで全てをやろうということで取り組んできましたが、地上波のテレビ、Jリーグ大分トリニータのスポンサー、YouTubeなどの動画サービス、あるいは地方銀行など提携先とのタイアップなど、様々なチャネルを駆使して情報を発信するように方針を変えました。

 地方などでは「外資系ですか?」と言われることも多かったのですが、取り組みの結果、一般のお客様の間でもSBI損保という名前に少しずつ馴染みが出てきたんです。

 さらに、北尾が「第4のメガバンク構想」を打ち出して以降、地方銀行への資本参加もありましたし、新生銀行の子会社化は決定打となった気がします。連日連夜、新聞を含めたメディアで動向が伝えられ、SBIの認知度が一気に向上しました。そこに我々のテレビCMなどが流れることでブランド力向上の相乗効果がありました。

 特に大分では、トリニータのスポンサーとしてだけではなく、県警察との交通安全の啓蒙活動や、県の健康増進や金融教育のお手伝いをするなどして、少しずつ地域に根差した会社になりつつあるという実感もあります。

 ─ ブランド力向上は一朝一夕ではないということですね。

 五十嵐 そう思います。大事なのは、そのブランドに「惚れている」ことだと思います。

 例えば、ソニーはエレクトロニクスの企業として高いブランド力を誇ってきましたが、1979年に米プルデンシャルと合弁で生命保険事業に参入、金融事業を手掛けるようになりました。当時、私は「ソニーが保険会社?」と驚いたものです。

 しかし、やはり「ソニー」というブランドへの信頼は大きく、今やソニー生命保険は生保の世界でほぼ大手の一角を占めていますし、ソニー損保はダイレクト系損保の一番手です。

 SBIも証券からスタートしましたが、グループ発足から20年以上が経ち、SBIに対する信頼感、ブランド力ができてきて、近年は認知度が高まる中で、「保険もSBIで安心」と思っていただけるようになりつつあるのではないかと思います。

 ─ 先程、地方銀行とのタイアップというお話がありましたが、どういうことに取り組んでいますか。

 五十嵐 この2年間、集中的に地域金融機関とのアライアンスを増やしてきており、金融カード系も含めて29機関と提携しています。これによって、ネットで加入するという概念を超えて、銀行でも入れる保険になったわけです。

 銀行で保険というと「銀行窓販」が思い浮かぶと思いますが、これも導入された頃はゲームチェンジャーだったと思います。ただ、我々が取り組んでいるのは、例えば銀行の預金者の方にダイレクトメールを送って加入してもらうなど、窓販とは違うスキームです。

 最近では島根銀行に「スマートフォン支店」というバーチャルな支店をつくり、その中で保険商品を購入できるという、今までとは一味違うやり方をしています。

 ─ すでに銀行窓販に取り組んでいる保険会社とは競合しませんか。

 五十嵐 確かに、先行して金融機関と関係を築いている保険会社はあります。普通に行くと、「その保険会社さんとの関係があるので」と断られるでしょう。

 しかし我々は、その保険会社さんとは売り方も商品も違いますから、金融機関も他社も、今までのビジネスを維持でき、金融機関は今まで開拓できていなかった分野が開拓できます。

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