2023-02-06

【大正製薬ホールディングス・上原明社長に直撃!】「日本人には改めて『健康教育』が必要」

上原明 大正製薬ホールディングス社長

─ 大正製薬ホールディングス社長の上原明さん、コロナ禍による行動制限などもあった2022年でしたが、23年をどう見通していますか。 

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 上原 22年は、まさにまだら模様でした。コロナに関連する口腔用薬、鎮咳去痰薬、検査薬などは好調でした。また、一時外出が増えた際には酔い止め薬などが含まれる鎮暈剤市場が伸びたこともありました。 

 一方でコロナ禍に急増した手指消毒剤需要は反動減が見られましたね。 

 23年もコロナ禍次第という面はあります。ただ、皆さんの中に自分の健康は自分で守るという「セルフメディケーション」の意識が非常に強くなっていることを感じます。 

 ですからお客様は、OTC(一般用医薬品)を買うだけでなく、健康食品を購入される方も増えています。高齢長寿社会を迎え、社会保障費の中の医療費が増加していることから、このセルフメディケーションはますます重要になってくると思います。 

 ─ 何か病気になったら、すぐ病院に行くというのでは日本の皆保険制度が成り立たなくなるという声は強まっています。 

 上原 米大統領のリンカーンの言葉で、「Government of the people, by the people, for the people」がありますが、「自分の健康は、自分のために、自分で守る」、特に「自分のために」という意識が大事です。 

 ただ、聖路加国際大学の中山教授は、日本人のヘルスリテラシーは低いと指摘しています。 

 世界を見ると、欧州の医療制度は家庭医の先生が、1人あたり1000世帯程度の健康状態を診ているそうです。その中で問題があれば中型、大型の専門病院に紹介する。そして子供の頃から健康について気をつけるべきことを教えているのです。 

 また、東南アジアの国々では専門的な医療知識がなくとも大家族の中で民間療法の伝承が続いており、それがセルフメディケーションになっている。日本では、そうしたノウハウが失われています。 

 改めて健康に関する教育をする必要があります。ただ、浸透までにはひと世代、30年くらいかかることを覚悟しなければなりません。 

 ─ 上原さんは城西大学の理事長も務めていますが、教育の重要性をどう考えていますか。 

 上原 現代の価値創造の3資源は「技術、研究、情報・データベース」だと思います。世の中のリアルなモノとデータを組み合わせて、新たな価値を生み出さなければならない時代ですが、それができるのは「人」ですから、人材育成が重要です。 

 そして、夢と志を持って、生涯学び続ける、「探究」し続けることが大事だと、学生達にも訴え続けています。

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