2023-02-09

東急不動産ホールディングス・西川弘典社長に直撃!再生可能エネルギーの事業拡大はどうなる?

西川弘典・東急不動産ホールディングス社長




再生可能エネルギーが大きな柱に

 ─ 東急不動産HDは、2030年までの長期ビジョン「Group Vision 2030」を打ち出していますが、前半に当たる中期経営計画2025を「再構築フェーズ」に位置づけていますね。今後のポートフォリオの考え方を聞かせて下さい。

 西川 レジャー事業、ヘルスケア事業、商業施設を再構築領域にしていますが、事業そのものを止めるのではなく、プロジェクトごとに見て、キャッシュ・フローが良くないものについては入れ替えていくということが中心になってくると思います。

 今年度は150億円程度の特別損失を見込んでおりますが、こうした大きな外科手術のような特損は今年度で終わりにしたいと考えています。

 そうして「再構築フェーズ」を早期に終え、25年度以降の「強靭化フェーズ」に移行したいと思っています。

 ─ 投資家など市場からの目線は変わってきたと感じていますか。

 西川 投資家の皆さんからは「次どうするのですか?」というご質問が多く、さらなる事業改革を求める声が多く聞かれます。ただ、我々が本格的に変えていくぞという姿勢は、社員、一緒にお仕事をさせていただいているステークホルダーの皆さん、そして投資家の皆さんにも伝わり始めているのではないかと感じています。

 ─ 現在の中計期間中で、投資と財務のバランスにはどう気をつけていますか。

 西川 まず投資案件については、我々が今抱えているビジネスから出てくる利回り以上の案件が多くありますから、投資先に困ることは、まずありません。

 社会課題を解決すると同時に、我々にとっても安定資産、収益資産になっていくであろう再生可能エネルギー事業がメイン事業の一つになりつつあります。

 ですから、財務規律をいかに守るかということが、今最も腐心しなければならないことです。それについては、ある程度バランスシート(貸借対照表)の外科手術を進めていることで維持できると思います。

 また、足元で金利や為替で大きな影響が出ていませんし、コロナ禍の中では低金利で長期固定化を図ってきましたから、当面の資金需要は安定しており、財務規律を守るベースはできているのではないかと。

 ですから、投資が増えていく分については、しっかり資産ポートフォリオを入れ替えていけば、十分「強靭化フェーズ」に移行することができると思っています。

 ─ 再生可能エネルギー電力の発電に関しては、電力会社などの発電事業者を含め、日本でも有数の規模になってきているとのことですが、まだ投資案件はあると。

 西川 あります。これまでのいわゆるFIT(固定価格買い取り制度)から、今後はFIP(売電価格に一定の補助額を上乗せして買い取る制度)などに注力していきます。また、大手企業との交渉で、所有する土地などに再生可能エネルギー発電所を建設する「コーポレートPPA(電力販売契約)」も進めています。

 また、データセンター開発への取り組みも始めました。データセンターは大量の電力を消費しますが、データセンターがなければ世の中全体が困ってしまいます。そこで北海道石狩市では、我々が供給する再生可能エネルギーで運営する、環境負荷の低いデータセンターの開業に向けて取り組んでいます。

 さらに、将来に向けて注目しているのが蓄電です。太陽光や風力など再生可能エネルギーで起こした電気を貯めることができるようになれば、世の中の効率は相当よくなります。こうした技術の進展も含め、今後も事業拡大の可能性はまだまだあると思っています。

 ─ すでに、埼玉県さいたま市の全家庭分の消費量に匹敵する約1.3ギガワットの定格容量を保有しているそうですが、今後目指す水準は?

 西川 25年までにほぼ倍増の2.1ギガワットまで高めたいと考えています。今後、さらなる事業展開をしていくためにも、ある程度の発電事業者としての規模感が大事だと思っていますから、早期に実現していきたいと思います。

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