2023-03-10

カジュアル衣料品世界1を目指して! ファーストリテイリング・柳井正の「経営はやはり『人』、人への投資を!」

柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長



「危機感が必要」



 時代は常に動き、環境も常に変化する。その中を生き抜くには、「危機感が必要」という柳井氏の考え方、生き方である。

 環境の激変で、会社は大変な影響を受ける。それなのに、会社にはすでに資産ができて、地位もあると思い込んでいやしないかという見つめ直しが必要。

「ええ、会社自体が安定していると思っている。でも、安定ということはないんですよ」

 かつての高収益で名を馳せた米GMも最近は元気がないし、コダックも経営危機に見舞われ、縮小・整理を余儀なくされた。日本では歴史ある東芝が〝不正会計〟や経営陣の対立からおかしくなり、今、再生の道を歩いている。小売業の領域では、一時代をリードしたダイエーが経営破綻した例もある。

 まさに「会社は潰れるものであり、そのために経営者がいる」という柳井氏の経営観。求められるのは、危機感である。

「危機感がなかったら、会社を経営する意味がないですよね。いつかは全員が死ぬ。人の命は有限ですから、生きている間にできる事は全部やろうと。そういう事です。会社自体は続いていかないといけない」

 柳井氏は、「会社は潰れるもの。そうならないように常に危機感を持って仕事に当たる」と語り、「この経営の本質は古今東西同じで、変わらない」と強調する。


「人」への投資



 力の源泉は「人」である。

 ファーストリテイリングは本社や国内で働く約8400人を対象に、年収を最大4割引き上げると1月中旬に発表した。その狙いは何か?

 そこには、コロナ禍が3年続き、今年で4年目に入ったが、日本の本社や国内の『ユニクロ』などで働く社員が「国内の事ばかり考えて、内向きになっている」という柳井氏の危機感がある。

 そこで、賃金水準の引き上げを図り、前向き気運をつくり直そうという考えである。

 人への投資─。引き上げ幅は数%から40%までと幅広い。つまり、その人の仕事に対して取り組む姿勢だとか、実績を評価して、引き上げ幅を決める。

 海外の『ユニクロ』勤務の社員の賃金が、日本に比べて〝割高〟になってきていた体系を見直すという狙いもある。今後、グローバル経営を推進していくためにも、どの国、どの地域からでも、優秀な人材を集めるための措置でもある。

 日本は安い─。2022年、日本では円安が急速に進み、一時期、1ドル・150円の水準にまで円は売られた。資源・エネルギーをはじめ、輸入物価はハネ上がり、家計を苦しめる。

「今、日本は世界に対して、バーゲンセールをやっている感じ」という柳井氏の現状認識。そういう状況下を生き抜くには、「付加価値を上げる人をもっと採用しなくてはいけない」という経営観である。

 そして、柳井氏は明確に宣言する。

「全員をきっちり評価して、評価した人を抜擢する。評価できない人は評価できないと、はっきりすることです」

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事