2023-04-07

全銀協・加藤勝彦会長に直撃!「激変する経済環境の中、銀行としてどう役割を発揮していくか?」

加藤勝彦・全国銀行協会会長(みずほ銀行頭取)

「少なくとも今年度上期は厳しい状況が続く」─全国銀行協会会長の加藤勝彦氏はこう指摘する。米国で中堅銀行2行が破綻、欧州でも大手投資銀行が経営危機に陥るなど、経済環境が激変している。こうした中で銀行の役割としては「お取引先を資金供給で支援するのが『一丁目一番地』」と加藤氏。日本で銀行が発足して150年という節目にあって、危機時の銀行の役割とは─。

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米銀の破綻は金融システムに波及するか?

 ─ 欧米の金融引き締めの副作用などもあり、2023年3月には米国ではシリコンバレーバンク(SVB)などが破綻、欧州では大手投資銀行のクレディ・スイスが経営危機となって同業のUBSに買収されるなど厳しい環境となっています。これが金融危機の入り口になるかどうかが懸念されています。現状と今後をどう見ますか。

 加藤 状況をしっかり見ていく必要があると思っています。端的に言って、米国の2行の破綻が個別行の問題と捉えていいのか、金融システムに影響するものなのかということです。

 足元の我々の認識では個別行の問題と捉えています。SVBにはALM(Asset Liability Management=資産・負債の総合管理)で甘さがあったという認識です。ただ、風評などがどう波及していくか。米国の金利はこの1年で0%台から4%を超える水準になりましたから、副作用としての歪みは当然あるのではないかと思っています。

 ─ これまで米国ではインフレ抑制のために金利引き上げを進めてきましたが。

 加藤 仮に危機が広がったとすると、それに対応するために流動性を供給しますから、利上げの継続とは矛盾する形になるので難しい。そうなるとインフレをなかなか退治できないということにもなりかねません。

 一方で違う見方もあります。元々、米国では融資が厳格化されていました。これによって景気が悪化し、インフレが収まるというシナリオですが、これによって失業率悪化など厳しい景気後退に陥る「ハードランディング」になるのか、景気後退を避けながら物価が落ち着く「ソフトランディング」になるのか次第で、かなり雰囲気が変わってくると思います。

 繰り返しですが、米国で起きたのは個別行の問題だと考えていますが、事態を矮小化することなく、しっかり注視することが必要です。これは欧州で起きている事態についても同様です。

 ─ 金融危機、景気後退の懸念はあると見ますか。

 加藤 金融システムに大きな影響を与えることになれば、もちろんリセッション(景気後退)ということになりますし、個別銀行の問題として落ち着いたとしても、そもそもインフレを抑えるために金利を上げてきたわけですから、一定の覚悟を持って、リセッションを起こしてでもインフレを退治するというのが米国であり欧州の姿勢だと見ていますから、少なくとも今年度上期については厳しい状況が続くのではないかと思います。

 ─ 日本も、欧米で起きている事態とは無関係ではいられないと思いますが、今後の動きをどう見通していますか。

 加藤 日本経済にも不透明感はありますが、昨年対比で言えば、コロナによる行動制限が解除され、インバウンド(訪日外国人観光客)も戻ってきたことはプラスで、経済状況は昨年に比べてよくなるのではないかと見ています。

 ただ、不透明な部分があります。特に製造業では依然として半導体不足が続いていますし、マーケットである欧米の経済が今後どうなるかによって大きく変わってくるのではないかと思っていますから、この点はマイナス要因としてあると思います。

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