2023-04-07

全銀協・加藤勝彦会長に直撃!「激変する経済環境の中、銀行としてどう役割を発揮していくか?」

加藤勝彦・全国銀行協会会長(みずほ銀行頭取)




日銀の新体制をどう見ているか?

 ─ 厳しい環境下での全国銀行協会会長就任ですが、改めて抱負を聞かせて下さい。

 加藤 環境変化で言えば、日本において3つあります。第1に少子化によって市場が縮小してくる。かつ、人手不足が顕在化しています。第2にサステナビリティなど、1人ひとりの意識、価値観が変化し、行動も変わってきている。

 第3にデジタルの進化です。コロナ禍によってさらに加速されましたが、人口減の日本の人手不足を解消する、あるいはユーザーの利便性を高めるツールとなります。これらが大きなメガトレンドだと見ています。

 これに加えて、22年2月からのロシアのウクライナ侵攻などの地政学リスクが顕在化しています。これによってもはや、グローバル経済というよりブロック経済化が進み、そのブロックの中でサプライチェーンを強化する流れになっていく。

 こうした様々な要因が重なった結果、各国の金融政策、財政政策が大きく変化をしています。先程申し上げたように、その中で様々な歪みが起きている。

 こうした大きな外部環境の中で日本政府は「新しい資本主義」の実現に向けて様々な取り組みをしています。我々はその中の課題解決、政府や他の業界と連携しながら、金融で経済を支えていくことが大きな役割です。

 実は今年は第一国立銀行(現みずほ銀行)の設立、つまり日本に銀行ができて150年という年です。これまでの間、銀行界として日本経済を支えてきたという自負があります。不透明な状況ですし、すぐには解決できない課題も多くありますが、しっかり道筋を付け、明るい未来につなげていくという思いで活動していきたいと思います。

 ─ 4月9日には植田和男氏が日本銀行総裁に就任します。「マイナス金利」や「イールドカーブコントロール」(YCC、長短金利操作)といった政策が修正されるかどうかによって銀行にもプラス・マイナスの影響が出ると思いますが。

 加藤 金融政策は日銀の専管事項ですから、全銀協会長としてのコメントはできませんが、個人の立場でお答えします。

 日本経済がまだまだ本格基調ではない中、物価や賃金の安定的な上昇がしっかり確認できないと金融緩和政策の方向転換は難しいのではないかと思いますから、方向転換には時間がかかると見ています。

 足元で東京都区部で消費者物価が4%台になっていますし、一部では価格転嫁も始まるなど全てがコストプッシュではありませんが、欧米の経済が先程申し上げたような状況であることを考えると、安定的な上昇には疑問符が付きます。

 また賃金は、足元で多くの企業がベースアップも含め引き上げを行っていますが、今の経済環境を考えると、定着には時間がかかるのではないかと。その意味で金融緩和政策は当面続くものと見ています。

 ─ 日銀新体制の布陣に対する印象は?

 加藤 植田さんはマクロ経済、金融経済学の第一人者ですし、日銀政策委員会の審議委員を務めておられた時にも、政策提言をするなど実務にも精通されています。

 また、副総裁として氷見野良三さん、内田眞一さんが就くなど、理論面、実務面双方のスペシャリストがおられる大変強力な体制だと認識しており、実体経済をご理解いただいた上で政策を進めていただけることに期待しています。

 今後、大事になるのはコミュニケーションではないかと思っています。市場関係者や国民に、金融政策の効果と副作用について、しっかりとコミュニケーションを取っていただくこと、これにも期待しています。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事