2023-04-07

三井住友銀行頭取・福留朗裕の「現場主義」経営 「用心しながらも楽観を忘れない」

福留朗裕・三井住友銀行頭取




米国ではネット銀行で個人への浸透図る

 海外市場での成長も重要。注力しているのは大きく「米国」と「アジア」。特に福留氏は約16年の海外勤務経験を持つ「国際派」だけに、その経験を活かせるかが注目されている。

 米国では銀行と証券の連携ビジネスが柱。「1つの言語、1つの法律、1つの規制の国で、こんなにありがたいマーケットは唯一無二。リスクもあるが、成長しているマーケットだけに、我々がさらに食い込む余地は十分にある」

 さらに、米国ではネット銀行を通じて個人向け金融に参入。SMBC傘下で、カリフォルニア州ロサンゼルスに本拠を置くマニュファクチャラーズ銀行の一部門としてネット銀行「ジーニアス・バンク」を立ち上げた。

 個人向け無担保ローンの提供から始めて貯蓄性預金や住宅ローン、クレジットカードなど順次、品揃えを広げていく考え。

 ゼロからのスタートだけに経営の重荷になるような店舗などの「レガシー」を持たないため、身軽に動けることが強み。コストを抑えたデジタル金融に特化する戦略。

 この領域はIT企業の攻勢も激しくなっている。だが、彼らの壁になっているのが「銀行ライセンス」。スマホ銀行といえども、銀行ライセンスの取得には10年かかることもあり得る。この点はSMBCにとってアドバンテージになる。

 この分野には、米大手投資銀行・ゴールドマン・サックスもネット銀行「マーカス」で参入しているが苦戦中。市場からは早く市場を取ろうと無理な計画を進めていると見られている。

「マーカスは研究している。米国では肥沃なマーケットの中でリテールも、デジタルも伸びている。我々が少しのポーション(一部分)を取るだけで、まとまったビジネスになる」

 先行事例も研究しながら、無理をせず、着実に成長を目指すという考え方。

 アジアでは「マルチフランチャイズ戦略」で、中長期でアジア各国にSMBCのフルバンキングサービスを根付かせるための取り組みを進めている。

 3月27日には、ベトナム民間銀行2位のVPバンクに約2000億円を出資、持分法適用会社とすることを発表した。

「アジア戦略はまだ完成形ではない。かつて標榜した『第2、第3のSMBCグループを他国につくる』ということを、時間をかけてやっていく」(福留氏)

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