─ こういった取組が広がると市民の意識も変わってくるのではないでしょうか。
内藤 その通りです。例えばこの生理用品の活動を報道で知った地元の女子大生が自分たちにできることはないかということで、自分のバイト先の社長さんに「私たちも何かやりたい」と進言し、生理用品をその会社さんが徳島市に寄付するといったことが起こりました。
それからマスクがないという状態のときには、地元の中学生のバレー部員が自分たちでマスクを作って寄付しに来てくれました。市が本気で動き出せば、市民も自分たちができることはないかと考え、市役所に提案してくれて動いてくれる子たちが増えてきたのです。
─ 市と市民との連携になったということですね。
内藤 ええ。これまで徳島市では公共施設にネーミング・ライツ制度を導入しており、動物園は「とくしま動物園STELLA PRESCHOOL ANIMAL KINGDOM」という名称になりました。ここでも、単にネーミング・ライツで名前だけにお金を払って終わりではなく、動物園とも連携して新しい取組をしようと動き出しています。
─ 一方、苦労したことはどんなことでしたか。
内藤 昨年の夏の「阿波おどり」を開催した際には、実際は阿波おどりで踊ったことが感染を広げたという科学的な証明はされていないのですが、阿波おどりでコロナの感染拡大が起きたといった報道がされてしまったことは残念でした。
─ まさにコロナ禍が始まった時期での市長就任でした。
内藤 そうです。学校も全面休校を余儀なくされ、緊急事態宣言が発出された時期でもありました。2020年の4月18日に市長に就任して21日には4日間の阿波おどりを全面中止すると宣言しなければなりませんでした。これは辛かったですね。
─ このときに自分はどういうスタンスで市民に説明していこうと思ったのですか。
内藤 国や県、市の制度や仕組みに則って、やるべきことをやるというスタンスでした。
─ では、今後の地方活性化に向けた方向性について内藤さんの考えを聞かせてください。
内藤 今の徳島市の人口は約25万人なのですが、ほぼ横ばいです。ただ、徳島県全体としては毎年8000人から9000人規模で人口が減少しています。この影響は県庁所在地である徳島市にも出てくるでしょう。
その意味では、地域と多様に関わる関係人口や観光で来た交流人口をいかに増やしていくかです。その軸にあるのは阿波おどりです。これは大きな財産です。
─ 産業振興については、どのように進めていきますか。
内藤 IT系の人材をもっと活用したいという思いがあります。私自身がバックグラウンドとして学生時代からITやスタートアップ企業との関わりが強く、その分野には注力しています。ITや起業であれば、どこでも住める上に、女性も活躍しやすいですからね。
昨年度も徳島の大学を卒業して東京の企業に勤めながら、そのまま徳島に住んで働いている卒業生が出てきました。リモートワークでの就業が可能な会社社も増えてきていますので、IT人材を増やし、定住促進や女性の活躍を進めていきたいと考えています。その他にも女性のデジタル人材育成や民間と連携した先進的な起業支援の取組も行っています。
─ その際の徳島市のウリは、どんなことになりますか。
内藤 例えば県西部では6~8人乗りのゴムボートに乗り、力を合わせてパドルを使って川を下っていくラフティングの世界大会を開いていますし、南部ではサーフィンの世界大会も行われています。こういった魅力的な場所がたくさんあります。徳島市に住んで必要な都市機能のサービスを受けながら、県内で世界レベルの遊びもできるといった点をウリにしていこうと。
また、都市部の人たちが一定期間地方に滞在し、働いて収入を得ながら、 地域住民との交流や学びの場などを通じて地域での暮らしを体感してもらう「徳島市ふるさとワーキングホリデー」を開催し、伝統工芸である藍染めや木工などを体験してもらう取組なども行っています。