日本経済の悪化は「ゼロ金利政策」で起きた
─ 政府や政策当局を含め、この状況を打開する手立てはあると見ますか。
中前 ありません。1回は大ショックが起きます。これは政策の問題ではなく、マーケットが勝手に動いてそうなるわけですが、それを止める手段を政策当局は持っていません。
─ となると、嵐が来ることに備える必要があると。企業経営者はどういうスタンスを取るべきだと考えますか。
中前 先行きは相当深刻で厳しい。今までのような、ちょっとした谷があっても、すぐに元に戻ると考えていると危ない。
今回は、日本で言えば1990年代のバブル経済が崩壊して以降、初めて本格的な変革が起こるはずです。世界的に言えば、2008年のリーマン・ショック以降、2度目の大きなショックが起きつつある状況です。
ただ、日本経済が90年代からおかしくなった最大の理由は、ゼロ金利政策で市場が消えたことです。それによって、いわゆる「ゾンビ企業」(実質的に経営がほぼ破たんしているにもかかわらず、金融機関や政府などの支援により市場から退出せずにとどまっている企業)が増えたわけです。
ゼロ金利はゼロ成長と同じです。つまりゼロ成長を強いるような金融政策を行った。財政で少々無茶をしても、ゼロ金利にはかなわないというのが、この30年間の動きです。
ところが、金利が上がってくると、その瞬間の厳しさは別にして、冷静に先を考えると市場が復活してきます。一方で、金利が3%ならば、その3%を支払えない企業は消えていきます。
人手不足についても、ゾンビ企業が抱えていた雇用が開放されることで解消されるでしょう。問題はむしろ、開放された雇用をどう使うか、職業訓練をどういう形でやるかです。しかも大掛かりにやらなければなりません。