2023-05-29

ロイヤルホールディングス会長・菊地唯夫「多店舗化による『規模の成長』とあわせて『質の成長』を志向する事業も」



ファミレスの店舗削減の意味

 ─ 生産性を上げるための工夫をしてきたわけですね。

 菊地 はい。ただし外食産業はなかなかそれができなかった。では、外食産業で生産性を上げて利益を上げ続けるためにどうすればいいのか。自分たちがコントロールできるコストをいかにコントロールするかしかありません。自分たちがコントロールできるコストとは何か。原材料費と人件費です。


コロナ禍でファミリーレストランの「ロイヤルホスト」は店舗数を280店舗から220店舗に減らした

 ただ、原材料費を圧縮し過ぎた結果が虚偽表示や異物混入につながってしまったのかもしれません。それならば原材料価格は落とせない。次は人件費を下げるしかない。ところがこれも過剰勤務やバイトテロの温床につながっているのかもしれない。

 つまり人口が増加していくときにつくってきた、お客様の需要をベースにチェーン理論でコピーして画一性、効率性、スピードをベースとしたモデルが、人口が減少し始めたことによって転機を迎えたのです。

 ─ では、生産性をどうやって上げようとしたのですか。

 菊地 私が意識したのは、それぞれの事業の成長の在り方で、ロイヤルグループで言えば、天丼のファストフード業態である「てんや」や空港や高速道路の内のレストランを運営する「コントラクト事業」で規模を伸ばしていこうと。これらは供給制約が比較的起きにくい事業になっていたからです。

 一方でファミリーレストランの「ロイヤルホスト」は逆に供給制約を受けやすいので規模を圧縮しました。店舗数を280店舗から220店舗に減らし、かつ営業時間も短くしました。店休日も設けました。規模を圧縮することによって付加価値を増やしていこうと考えたのです。

 生産性とは従業員の数を分母とすると、分子は付加価値になります。生産性を上げるということは分母を小さくするか分子を大きくするかしかありません。

 でもサービス産業の場合に難しいのは従業員の数という分母を減らすと、逆に価値が下がってしまうということです。分母を減らして生産性を上げたつもりが、それ以上に分子が小さくなってしまうケースがあるので、そこだけに依存してはならない。規模を圧縮することによって、より現場に余裕を持ってもらって付加価値を上げていこうと。これがロイヤルホストなどで意識していたポイントです。

 ─ 付加価値の向上がサービス産業の課題だと。

 菊地 ええ。そこで私が意識したのが「質の成長」です。横軸に規模、縦軸に価値を置いたとき、一定のサービス産業はどこかで頂点を迎えて右肩下がりになる放物線のようになります。店舗数が増えすぎると陳腐化が起きたり、顧客の奪い合い、もしくは特定の食材が使えなくなったりするからです。ロイヤルホストはここにいました。

 そこでまずは先ほど申し上げたように規模を圧縮したと。次に価値を最大化するポイントはどこなのかを探しました。ただし、圧縮するだけでは縮小均衡に陥ります。反転させるのはテクノロジーの力を使うしかない。我々が様々な実験をやってきたのはこういった背景からです。

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