従業員向け決算説明会を実施
─ 構造改革をするときには現場でも混乱が起きるものですが、現場の従業員にはどんな説明をしてきたのですか。
菊地 社長になってから様々な施策を打ちましたが、一番良かったのが従業員向けの決算説明会です。決算が終わると全国を回るんです。各地の店舗で働く従業員に決算の中身を説明するのです。最初は初めて聞く話なので現場も戸惑っていました。専門用語も出てきますからね。そういったものも分かり易く説明するように努めました。
すると、次第にフィードバックが増えてきたのです。そして内容も経済の仕組みや経営、株式市場の仕組みなども説明するようになり、私が講師を務める経営塾も始めました。実はこの経営塾を始めた狙いも、経営塾の中身というよりも、経営と現場の距離を短くすることでした。
─ 社員と問題意識を共有することにもつながりますね。
菊地 そうですね。そもそも私が社長になったとき、当社では内紛のようなことが起きていました。その結果、現場は経営にそっぽを向いていたのです。やはり経営に信頼感がないと成り立ちません。我々は人が価値を直接的に生み出す産業であるからです。ですから、彼らともっと目線を合わせていかなければいけないと思いました。
そして同時に「10年のビジョン」をつくりました。というのも、ロイヤルグループの1997年から2010年にかけての業績の推移を見ると、私は強烈な違和感を感じたのです。それは増収増益がほとんどないということでした。売り上げが上がると利益が下がり、売り上げが下がると利益が上がる。増収減益と減収増益を3年周期で繰り返していたのです。
─ この原因とは?
菊地 この間、既存店が売上高の前年割れを続けていたからです。しかも、既存店が前年割れを起こしているのに全体の売り上げが上がっている。これは既存店のマイナス以上に新店を出しているだけだったからです。しかし、既存店の売り上げが下がっていると既存店の利益率は下がる。新店はすぐに利益貢献しない。そうすると増収減益となってしまい、最後は赤字です。
赤字になれば不採算店を閉めて減損処理をし、新店の出店も凍結します。ただ、既存店がマイナスになっていて新店をやめれば売り上げは下がる。でもリストラして会社が軽くなれば利益は回復すると。これをずっと繰り返していたのです。