2023-06-15

みずほFG社長・木原正裕「2年目の課題」、社員との対話を続けて1年

新たな中期経営計画を発表した、木原正裕・みずほフィナンシャルグループ社長



 そして、もう1つ重要視されるのが前述の国内法人ビジネス。「みずほFGの原点は何かというと、大企業取引」と話すのは、みずほFGの役員経験者。旧日本興業銀行は多くの大企業のメインバンクであったし、旧富士銀行、旧第一勧業銀行は共に非財閥系の企業の支持を集める銀行だった。この元から持っていた強みを、改めて発揮することができるかが問われている。

 ただ課題もある。それが「デジタル」。23年、LINEとの共同事業として進めてきた「LINEバンク」は、システム開発の遅れ等を理由に開業を断念。これに代わる新たなデジタルバンク構築に向けて、どんな手を打つかが問われている。「デジタルは他の2メガに比べて劣位にある。我々自身のチャネルのデジタル化を徹底的に進めていく」と木原氏は話す。

 この分野では木原氏が話すような自前での取り組みに加えて、前述のように充実しつつある資本を使ったM&Aで、時間を買いに行く可能性もある。

 もう1つはIT企業の証券会社との連携。22年11月には800億円を投じて、楽天証券の議決権比率19.99%を取得、持分法適用会社とした。

 出資に関して、当時のみずほ内には慎重論もあったようだ。ネット証券ではすでにソフトバンクグループと「PayPay証券」を共同運営しており「楽天証券への資本参加は戦力の分散につながるだけ」などと疑問視する声があったため。ただ、ペイペイ証券は口座数約32万口座と、900万口座以上を有する楽天証券との差は大きい。両社と、グループのみずほ証券を上手に使い分けた証券戦略を取ることができるかが問われる。

 今回の中計では、新たなパーパスも打ち出すなど「木原カラー」が出てきているが、まだグループの人事は大きくは動いておらず、その部分でのカラーはまだ出ていない。次の人事の時期に、どういった布陣にしていくかが、今から注目されている。

 23年は、みずほFGの源流の1社である第一国立銀行が創立されて150年という節目の年。この年に木原氏は「もう1回、原点に立ち返ろう」と社内に訴えてきた。渋沢栄一や安田善次郎といった創業者達は、様々な資本家と共に日本の「殖産興業」に挑んできた。「それがみずほのDNAであり、再認識すべきこと」と木原氏。

 システム障害から立ち直った今、他の2メガを追撃する反転攻勢に出ることができるかが問われている。

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