日本でイノベーションが起きない理由は何か?
─ 〝失われた30年〟と言われる中で、日本の経済再生をどう図っていくか。入山さんはどこから手を付けていけばいいと考えますか。
入山 日本の課題は山積しているんですが、わたしは多くが経営の問題だと思います。
われわれ学者が言うのも偉そうですけど、わたしは日本の経営というのは長い間、欧米のグローバル基準に比べると3~4周遅れだと思っているんですね。別に欧米の企業が偉いわけではありませんが、最大のポイントは日本の会社がイノベーションを生み出せていない、あるいは生み出せそうに見えないということだと思います。
─ しばらくイノベーションが起こっていないと。
入山 ええ。例えば、東京証券取引所が、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割っている東証プライム・スタンダードの上場企業に対して、改善策の開示を要請しましたよね。
わたしも経済産業省から相談を受けて、経団連の加盟企業を一緒に調査したんです。PBRが1以下の会社というのは理論上潰れた方がいいし、少なくともそんな企業をバックアップするのは止めた方がいいと思っていたんですが、驚くことに、経団連加盟企業の半分以上がPBR1以下でした。
─ 実際、かつての東証一部、今のプライム市場でも約5割がPBR1倍割れです。
入山 そうなんです。何もPBRの数字にとらわれすぎる必要はありませんが、株価が低いというのは、早いうちは未来が無いと思われているわけです。
では、その状態を脱出するために何が必要かと言ったら、わたしは「両利きの経営」と言っているんですけど、絶え間なく長期的にイノベーションを生み出す仕組みをつくることです。