2023-07-16

【政界】日本再生に向けて少子化対策と防衛力強化の財源確保をどうするか?

イラスト・山田紳



「におわせ」の代償

 天皇、皇后両陛下は6月17日からインドネシアを訪問する予定になっていて、21日の通常国会会期末には国内にいない。それを根拠にした「16日解散」説が徐々に現実味を帯びる中、15日午前、岸田は自民党岸田派事務総長の根本匠を首相官邸に呼んだ。根本は「解散の話はしなかった」と記者団をけむに巻いたが、党内情勢について意見交換したのは間違いない。前日、岸田は党税制調査会長でいとこにあたる宮沢洋一とも官邸で会談していた。

 しかし、15日夜、事態はあっけなく収束する。首相官邸で記者団の取材に応じた岸田は一連の騒動に自ら幕を引いた。「立憲民主党が内閣不信任案を出すなら、即刻否決するよう茂木(敏充)幹事長に指示を出した」

 記者が「解散はしないということか」とたたみかけると、岸田は「解散については考えて……今は……今国会での解散は考えていない」と明言。肝心な部分で言いよどんだところに苦悩の跡がうかがえた。

「いつまでも態度をあいまいにしていいのか」という与党の不満は岸田の耳にも入っていた。15日の取材は内閣記者会からの要請ではなく、岸田が首相秘書官に指示して設定したものだった。

 解散見送りについて、複数の首相官邸幹部は「財源確保法などが成立するめどが立ったからだ」と口をそろえた。「解散におわせ」はあくまで野党へのけん制であり、作戦通りに事が運んだという解説だ。本当にそうか。

 共産党書記局長の小池晃は「思わせぶりな発言で解散風をあおってみたら、支持率が落ちてきて怖じ気づいたのではないか。自らに有利かどうかだけで解散をもてあそぶことは許されない」と厳しく批判した。野党だけではない。岸田の発言を伝え聞いた自民党の重鎮は「何も準備していないのに解散なんてできるわけがない。総理自身の首が飛ぶぞ」と言い放った。

 小池が指摘した通り、6月に入ると内閣支持率にはわずかに陰りが見え始めていた。岸田の首相秘書官だった長男・翔太郎が首相公邸で親族と忘年会を開いた「公私混同」問題や、政府が普及を急いだマイナンバーカードにトラブルが相次いだことなどが影響したとみられる。

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