2023-07-16

【政界】日本再生に向けて少子化対策と防衛力強化の財源確保をどうするか?

イラスト・山田紳



「信頼は地に落ちた」

 とはいえ、内閣支持率の低下は与党への逆風を予感させるほどではなかった。むしろ永田町を驚かせたのは、6月14日に「自民党による情勢調査」という触れ込みで出回ったデータだ。

 いま解散すると自民党は2021年衆院選より約40議席、公明党は約10議席減らし、立憲民主党は約20議席、日本維新の会は約30議席増やす。立憲は100議席を超え、野党第1党の座を確保する─という調査結果だった。

 与党関係者は「自民党が本当の数字を表に出すはずがない。立憲を油断させて解散に誘い込むワナだったのだろう」と深読みする。

 事実、野党の選挙準備は遅れている。日本維新の会に勢いがあるといっても、地盤の大阪府とその近隣府県以外で小選挙区の候補者を浸透させるには一定の時間を要する。野党が乱立したら勝機が薄いことは、自民党が接戦を制した4月の衆院千葉5区補選を例に挙げるまでもない。

 しかし、本当に自民党が40議席も減らしたら、与党で過半数を確保したとしても事実上の敗北だ。岸田は政治責任を免れない。解散を見送ったのは、自民党の勝利に確信が持てなかったからではないか。

 岸田の解散見送り表明を境に、風向きは明らかに変わった。毎日新聞が17、18両日に実施した世論調査で、内閣支持率は5月の45%から33%へと急落。不支持率は46%から58%にはね上がった。両日の朝日新聞の調査でも支持率(42%)と不支持率(46%)が逆転した。有権者は早期解散を望んでいたわけではなく、この間の岸田の振る舞い自体に厳しい視線を注いだのだ。

 態勢を立て直すには与党の結束が不可欠だ。しかし、自民、公明両党は首都を舞台に激しく対立した。

 衆院小選挙区の「10増10減」に伴い、東京都内の小選挙区は25から30に増えた。公明党は現職を新29区で公認し、さらに新28区にも候補者を立てようとしたが、自民党が反発して調整は難航。公明党は28区をあきらめる代わりに、都内のほかの小選挙区で自民党候補を推薦しないという報復措置に出た。普段は慎重な発言が身上の公明党幹事長の石井啓一が「東京における自公両党の信頼関係は地に落ちた」と吐き捨てたことは、両党の亀裂の深さを物語っていた。

 自民、公明両党は東京以外では協力を継続すると強調している。全国の地方組織に動揺が広がれば、衆院解散どころではなくなるからだ。公明党代表の山口は「公明党との選挙協力によって得られた自民党の議席は相当数ある。自民党単独で衆参両院の過半数を取り続けるだけの基盤は失われている」とクギを刺した。

 岸田政権は当初から与党間のコミュニケーション不足が指摘されてきた。安倍政権における菅義偉(元首相)や太田昭宏(公明党元代表)のようなパイプ役がいないのが原因だ。先述した毎日新聞の世論調査では、自公両党が連立政権を「続けるべきだとは思わない」が67%に上り、「続けるべきだ」は17%にとどまった。他社の調査でも連立解消を求める傾向は顕著になっている。

 実際には、すぐに連立解消に向かう状況ではない。ただ、両党幹部が腹を割って話さない限り、関係修復は難しい。現執行部では打開できないとなれば、岸田は早ければ8月にも行う自民党役員人事で大幅な刷新に乗り出す可能性がある。

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