2023-07-14

AZ-COM丸和ホールディングス社長・和佐見勝に直撃! これからの物流の経営戦略をどう描くか?

福島県にある道の駅「猪苗代」で行われたBCPの備蓄機能としてクールコンテナを活用する実装デモ



なぜBCPに着目したのか?

 ─ 今後の成長が期待される領域ですね。さて、4つの事業の核の最後になる「BCP物流事業」は物流業界でも珍しい取り組みだと思うのですが、その骨子を聞かせてください。

 和佐見 もともと当社の事業の核は3つしかなかったのですが、昨今の社会的な環境の変化などを勘案し、新たに4つ目を設けたのがBCP物流事業になります。まだ本格的な事業になってはいませんが、この事業をどんどん伸ばしていこうと思っているところです。

 BCP物流事業とは地震、豪雨、大雪などの災害が発生した際に自治体などへの物流面での支援を行うというものです。災害発生時に当社が復旧に必要な車両や人員を提供したり、医薬品や食品の輸送・仕分け・配給稼働を手掛けていきます。また、備蓄にも取り組み、各自治体へのメリットを構築します。

 ─ この事業は今後も増えていきそうですか。

 和佐見 そう思います。実は日本総合研究所会長の寺島実郎さんからも相談をいただきました。寺島さんは医療・防災産業創生協議会の会長を務めておられ、全国各地にある「道の駅」に防災関係設備を置き、BCPの拠点にできないかということで当社に相談をいただきました。

 そこで当社の20代の若手社員が出向き、当社のBCP物流事業のご説明と提案をさせていただいたのです。すると、寺島さんをはじめとした会員の方々からは「面白い取り組みですね」とご賛同をいただきました。


クールコンテナの有効活用

 ─ 実際にどのようなことを提案したのですか。

 和佐見 当社のグループ会社に鉄道コンテナ輸送を手掛ける丸和通運という会社があるのですが、同社が所有するクールコンテナを実装し、クールコンテナを活用した新しい備蓄方法について提案しました。具体的には、クールコンテナを道の駅に置くだけで防災備蓄品を保管できます。クールコンテナが備蓄倉庫の代わりになるのです。

 通常、防災備蓄品を保管するためには、それ専用の施設を作らなければならないのですが、当社のコンテナを活用すれば、それを設置するだけで済みます。さらにはコンテナが置かれた近隣で地震が起きたり、台風の襲来などの災害が起きて住民の方々に被害が生じた場合には、避難所にコンテナを運ぶことも可能になります。

 ─ 機動性が高いと。

 和佐見 そうです。コンテナですから柔軟に対応することができます。しかも、当社のコンテナは電気を通電させれば冷蔵庫にもなる。通常、避難所には冷蔵機能を持った保管庫はありません。

 しかし、冷蔵機能を持った当社のコンテナがあれば、食材や食品も長期間保管できます。夏場でも問題ありません。当社のコンテナはマイナス25度まで温度管理ができます。

 ─ 全体感のある寺島さんであれば、その有用性に反応したのではないですか。

 和佐見 おっしゃる通りです。この提案を聞いた寺島さんからも「面白いですね」と言っていただきました。保管庫を作るにしてもお金がかかってしまいますが、当社の提案であればコンテナを置くだけですからね。しかも、当社がコンテナをレンタルするのですが、その日々の管理も当社が定期的に行います。

 ですから、コンテナを管理するための人件費も抑えることができますし、いざ災害が起こってコンテナを運用しなければならない場面になっても、当社の社員であればBCPに関する知識とノウハウを持っていますから、有事のときでもしっかり対応することができます。

 ─ この取り組みは具体的に動き出しているのですか。

 和佐見 ええ。6月2日から4日にかけて福島県にある道の駅「猪苗代」で、BCPの備蓄機能としてクールコンテナを活用する実装デモを行いました。

 実は避難所の問題の1つに栄養問題が挙げられます。おにぎりやパンなど冷たくて硬い食事を配り続けるのではなく、そこでコンテナの備蓄品を使って温かい食事や汁物、栄養価の⾼い野菜などを調理できる環境があれば、食べやすさや食事による安らぎを提供できるわけです。

 こういった実装デモを行うことで、仮に災害が起きた場合、避難所に集まった人の人数に応じて、いくつのコンテナが必要なのかが分かってきます。運用についても当社には全国に事業所がありますから、安心して任せていただけます。また、備蓄でも食品関係の場合、廃棄処分でなく、賞味期限前に市民の皆様に提供することで喜ばれ、処分コストも軽減できます。

 ─ 寺島さんは医療・防災産業創生協議会を通じて日本全国の自治体とのネットワークを作ろうとしていますよね。

 和佐見 はい。道の駅は全国に約1200カ所ありますからね。今回の実装デモを通じて全国に提案していきたいと思います。

 ─ コンテナを使ったBCP物流を提案した若手社員とはどのような人物なのですか。

 和佐見 もともと当社がBCPを考える中で、「事業化型の社会貢献」を追求していこうと考えていました。そこで私は「AZ─COM BCP諮問委員会」を作り、ここに防災研究の専門家の先生方にも加わっていただいたのです。その中で委員会の委員長に就いていただいたのが東北大学の丸谷浩明教授でした。

 この丸谷教授の下で、当社の若手社員が2年間、東北大学の共同研究員として学び、BCPに関する専門的な知識についてご指導いただきました。そのうちの1人が提案したのです。また、東京大学の目黒公郎教授の研究室でも3人(3年間)が研究に取り組み、BCPの専門知識を身につけています。

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