2023-08-22

先端教育機構・東英弥理事長に直撃!「私が宣伝会議を売却後にやりたいこと」

東英弥・学校法人先端教育機構理事長




本拠地周辺の土地を取得「表参道に青山」

 ─ 2社を売却した資金の使い途は?

 東 2社を売却した金額の全額を私学事業団に寄付しました。可能であれば、この資金を生かして、まずは我々が本拠を置く地元・表参道に貢献したいと考えています。

 先端教育機構の本部の土地以外に、昨年隣地を購入しましたので、所有地は約500坪あります。

 加えて今、都市再生機構(UR)が本学が隣接する土地の利用者の入札を募集しています。この土地を活用する機会が得られれば、先進国の新たな都市再開発モデルとして国内外に発信できる姿にしたいと考えています。コンセプトは「表参道に青山」、「表参道に森」です。構想は12年前から温めてきたもので、周辺説明会も行ってきましたから、地元の皆様はご存知です。

 ─ 文字通り「山」をつくるわけですか。

 東 そうです。都内の残土を運んできて「山」にして、そこに木を植えます。高さとしては、おおよそビルの5、6階に相当する25メートル程度を考えています。もし、高くするのに問題が生じた場合には、小高い程度にして、さらに木を植えることで新しい公園、森となる対応をしたいと思っています。

 完成後は公園として一般に無料開放します。定期的にイベントを開催したり、地域の方々が集まるような飲食のイベント「マルシェ」を開催するなどして、この場所に賑わいを創出したいと考えています。

 また、インバウンド(訪日外国人観光客)に対して、「環境都市東京」の魅力、新しい日本の都市づくりの方向性を発信することができます。さらには、日本は地震など災害の多い国ですが、都内で大規模災害が起きた際の避難場所としても活用していただけると思います。

 ─ なぜ、こうした構想を描くようになったのですか。

 東 周辺には明治神宮、根津美術館といった、歴史的・文化的な価値を有し、多くの方に愛されている場所があります。本学の立地は、その中間地点に相当し、地域資源を「つなぐ」場所としても機能するのではないかと考えました。

 また普段、表参道周辺を見ていると、明治神宮から歩いてきた年配の方々が一休みする場所がないことを実感しますから、この位置に公園があるのは大事だと思います。

 私は幼少の頃から自然が大好きで、木や緑や鳥などを大切にして親しんできました。地域も都心部も、土地固有の自然を守り、次世代に適切な形で繋いでいかなければなりません。事業家として、事業を大きくして資金をつくりながら、社会にとって価値のある構想を実現することをテーマにしてきました。

 事業構想大学院大学の入り口に伸びる楠は、私どもが土地を入手する前に切られたものですが、芽吹いたひこばえを大切に育て、今では20メートルほどの高さまで成長しています。未来に渡り木が切られることがないよう、ご縁のあった和歌山県・熊野本宮大社の宮司様よりお御魂を賜りお社が鎮座しています。多くの観光客の方や、お子さんが自由研究などで見に来てくれています。港区からも環境に関するモデル事業所として認定されているのです。

 ─ 社会的に意義のある仕事になりますね。

 東 そう思っています。日本では時折、実績を出した経営者が、自分のお金を自分の満足のために使っている例を目にします。その方が、大学などで学生達に向けて講演をしたりしている。それでは次世代を担う若者達に良い影響を与えないのではないかと心配になります。それよりも、ある程度実績を得たらば、それを社会に還元するという事例を示したいと考えたのです。

 こういうことができるのは、ビジネスを始めて45年、これまでに14社を設立しましたが、一度も赤字を出したことがないからです。そして34歳から56歳まで大学院に通って研究を継続してきたことが、現在の事業構想大学院大学などの教育事業につながっています。自分の名前を大きく出す必要はなく、ただ、事例があると、それを知り、着想を得て面白い人が出てくるのではないかと期待しています。

 そして、ここに至ることができているのは、社員や教職員、地域の方々の協力、支えがあったからで、その積み重ねの結果が現在です。ですから、多くの人に喜ばれるような場や環境を作り上げたいと思っています。

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