2023-08-11

日本損害保険協会・新納啓介会長「変化の激しい時代、個人・企業の選択、挑戦を保険という形で後押ししていく」

新納啓介・日本損害保険協会会長




サイバー攻撃など新たなリスクへの備えを

 ─ 近年は自然災害の激甚化が進んでいます。業界全体で支払いも増加していますが、どのように対応しますか。

 新納 我々、損保業界の最大の使命は、持続的、安定的に保険という商品をお届けして、国民の生活、経済活動を下支えし、健全な環境を整えることです。ですから、自然災害が頻発し、損害規模も大きくなっていますが、それを乗り越えて使命を果たしていかなければなりません。

 まず必要なことは、適正な保険料です。これは「損害保険料率算出機構」が過去のデータに基づいて算出するわけですが、この全てを商品価格に転嫁しないような努力を、会員各社に続けてもらいたいと思っています。

 また、事故を未然に防ぐための取り組みや、防災・減災への取り組みを、もう一段推進し、健全な業界を築いていくための努力も必要です。

 さらに、甚大な損害が起きた時に、いち早くお客様に保険金をお支払いするために、データを業界で共通化するような仕組みを構築することも大事です。これらの取り組みを長期目線でブラッシュアップしていくことで、いざという時にお役に立つ損保業界であり続けることにつなげられると思います。

 ─ 業界全体でDXにはどのように取り組んでいますか。

 新納 事故の防止、あるいは防災・減災に向けて、各社各様にDXに取り組んでいます。当社自身も様々な努力をしていますが、損保業界にとってますます必要なものだと思います。

 これは「お客様のため」という観点で言えば、さらに進化させていくことが必要です。または、今進めている取り組みを、幅広い世代のお客様に伝わるように、SNSを始めとした多くの媒体を通じてお伝えしていく。これもDXの1つだと思います。

 ─ 近年はサイバー攻撃など、新たなリスクも登場していますね。

 新納 ええ。こうしたサイバーなど新しいリスクは、まだまだ認知を進めていかなければいけない領域だと思います。例えば、大企業のみならず、中小企業を含めた企業の皆様にも、サイバーリスクへの備えに対する優先順位を上げていただくため、我々はもっと努力、発信していかなくてはいけません。

 付保率で見ると、米国に比べて日本ではまだサイバー保険の活用が少ないですから、その意味でもまだ開拓の余地があるのではないかと思っています。

 ロシア・ウクライナ戦争を反映して、サイバーリスクへの意識は以前より高まってはいるのですが、企業としてはコストをかける優先順位の中で、保険がどのレベルに来るかというと、まだ足りない。これは我々がもっと努力しなければいけません。

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