2023-08-11

日本損害保険協会・新納啓介会長「変化の激しい時代、個人・企業の選択、挑戦を保険という形で後押ししていく」

新納啓介・日本損害保険協会会長




日本から世界への発信を

 ─ 人口減少が続く中、自動車保険の先行きをどう見ていますか。

 新納 自動車保険は多くの種類がありますから、1つの形が全てのお客様にフィットするわけではありません。補償内容よりも保険料を重視されるお客様もいらっしゃれば、何がなんでも分厚い補償を望むというお客様もいらっしゃるわけです。

 我々が取り組むべきは、そうした多様なお客様のニーズに応えることができるような商品の開発です。あるいは、各社で出されている商品の内容を正しくわかるようにお伝えしていくことも重要になります。

 ─ 改めて、この3年半にわたるコロナ禍を業界として、どう総括しますか。

 新納 損保業界だけでなく、多くの方が経験したことのない3年半でした。この事態にどう対応するかについては、会員各社が様々な試行錯誤を重ねながら、働き方改革も含めてやってきたことだと思います。

 その中で迅速に対応できたことと、まだ課題を残していることと様々ありますが、1つは非対面でお客様と接点が持てるようになりました。

 これはコロナ禍がなければ、今の状態に到達するには、もっと時間がかかっていたのではないかと思います。

 対面を望まれるお客様もいらっしゃいますが、非対面で、お客様の都合がいい時にデジタルで接点を持つというのは、それを好まれる方にとっては非常にプラスになったと思います。

 ハイブリッド型で、対面でお会いすると同時に、デジタルで様々なご案内をしたり、保険金を請求していただくといった仕組みの進化もできました。これを後戻りさせずに進めることが大事だと認識できたのは、コロナ禍で多くの方がご苦労をされた中での、数少ないいい面だったと思います。

 ─ コロナは分類が5類となって以降、人々の活動も正常化しつつありますね。

 新納 コロナが落ち着いて、インバウンド(訪日外国人観光客)もどんどん日本に入ってきています。

 経済を盛り上げることも損保の役割ですが、インバウンドの方々が安心、安全に日本で過ごしてもらうための下支えをすることも重要になります。

 外国人の方々向けには、現在協会のウェブサイトは英語、中国語、韓国語がありますが、それを拡充して、ポルトガル語、ベトナム語を追加して、インバウンドの方々が過ごしていただく一助にしていただければと思っています。さらに、様々な関連団体と協力しながら、インバウンドの方々によりリアルに情報が伝わるような取組みも進めていきたいと考えています。

 私の実体験として、当社が前回、協会長会社を務めた時、私は北陸担当の執行役員として石川県金沢市に駐在し、北陸3県を見ていました。金沢はインバウンドの方々が多い地域ですから、その地域に合った発信の仕方を、北陸の協会の支部のみんなと一緒に考えて取り組んだことがありました。こうした経験も生かしていきたいと思っています。

 ─ 逆に日本から海外に対する発信については、どんな考えを持っていますか。

 新納 先日、日本でG7(主要国首脳会議)が開催されましたが、保険業界でも、世界最大規模の保険国際会議であるIAIS(保険監督者国際機構)の年次総会が、初めて日本で開催される年でもあります。

 金融庁とも歩調を合わせながら、アジアの中の保険先進国、リーダーとして、今後、保険がさらに発達していくための発信をしていければと考えています。

 他にも、ベトナムで開催されるAIS(ASEAN=東南アジア諸国連合=保険サミット)にも、損保協会として初参加する予定ですし、日本保険学会も加盟しているAPRIA(アジア太平洋保険学会)日本大会にも協会として初登壇し、防災・減災の取り組みを紹介していきます。

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