2023-08-28

【政界】勢いづく日本維新の会 野党第一党を狙うが失速の懸念も

イラスト・山田紳



失速の懸念材料も

 ただ、日本維新の会にとって懸念材料がないわけではない。そこには自公連立政権との関係が影を落とす。

 日本維新の会が主導してきた大阪・関西万博は、工事の遅れなどで25年4月からの開催が危ぶまれているのだ。万博には153カ国・地域が参加を表明しており、そのうち約56カ国・地域が独自に形状やデザインを設計・建設することを希望している。特色ある各国のパビリオンは万博の目玉となる。

 ところが、建設業者が決まっているのは8月上旬の段階で6カ国にとどまっている。多くの国・地域は設計・建設の相談もない状況だという。建築資材や人件費の高騰が背景にあるとされるが、日本国際博覧会協会(万博協会)の準備不足のほか、政府と大阪府・市、参加各国との調整不足があることも否定できない。

 そうなる状況を懸念した大阪府知事で日本維新の会共同代表の吉村洋文が首相・岸田に支援を要請したのは、開催まで2年を切った5月29日のことだった。岸田は「万博を成功させるために大阪府知事、大阪市長とともに一緒に頑張りましょう」と吉村に伝えた。

 準備が加速するとみられたが、自民党内には「維新はあれだけ自分たちが誘致したとアピールしていたのだから、遅れたのは維新の責任だ」と冷ややかな見方があり、パビリオン建設が加速することはなかった。

 もっとも、東京五輪・パラリンピックに続き、経済再生の「起爆剤」になるとされた万博も延期になれば、日本経済に与えるダメージは大きい。「政府には万博相もいる。最終的には国の事業なのだから国が主導しなければ、いずれ首相に矛先が向くことになる」との見方が広がった。

 そのため、経済産業省は8月2日、建設資材の高騰などに伴う代金未払いなどのリスクを軽減する「万博貿易保険」を新たに設けることを決めた。参加国のパビリオン建設を受注した国内の会社を対象に、代金が支払われない場合などは政府が補償する仕組みだ。

 さらに、経産省は前事務次官で現顧問の多田明弘を万博担当にする異例の人事に踏み切った。準備加速に向け建設業界などとの調整役を担う。局長級の幹部を専従で博覧会協会のサポートにあたらせることも決めた。

 しかし、今も与党内には「ドバイ万博も1年遅れたのだから、大阪・関西万博も遅れる理由を丁寧に説明すれば理解を得られるのではないか」との声がくすぶる。そうなれば日本維新の会も逆風は避けられない。


強気の姿勢が逆に・・・

 強気の姿勢も「もろ刃の剣」となっている。

 これまで日本維新の会は、野党と与党の中間に位置する「ゆ党」とか、「自民党別動隊」などと揶揄されてきた。だからこそ、国会議員の定数削減や調査研究広報滞在費(旧文通費)見直しなど自民党との違いをアピールしてきた。そうした中での馬場による「第2自民党」発言は、国民にとって自ら第2自民党だと認めてしまったように映る。

 しかも、安倍・菅政権からハト派とされる岸田政権になり、不満をもつ自民党支持層を引き付けようと、より保守色を打ち出すために安全保障政策や憲法改正などを前面に掲げれば、自民党の基本政策と重なってしまう。ジレンマを抱えるだけに、今後の対応によっては勢いが失速する可能性がある。

 それでも日本維新の会は強気だ。政権奪取に向けた「中期経営計画」に沿って、あくまでも単独政権を目指す構えを崩していない。

 馬場は8月6日に放送されたラジオ番組で、自公連立政権に参加する可能性について「選挙を経て自公両党で政権を維持できない場合、いろいろな余地が出てくる」と語り、次期衆院選で自公両党が過半数割れしたときは連立入りも排除しない考えを示した。自公政権を揺さぶる狙いがあったとされる。

 次期衆院選で野党第一党の座を獲得し、永田町で影響力、発言力を強めることができるのか。日本維新の会は社会保障改革と税制改革、成長戦略を一体的に取り組む政権構想を掲げているが、「第2自民党」にならないためにも党として骨太の国家観を語るべきときにきている。

 (敬称略)

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