2023-10-26

三井住友信託銀行・大山一也の「一味違う」資産運用戦略

大山一也・三井住友信託銀行社長




DXを進めて若年層にアプローチ

 これまで信託銀行は主に、高齢者層の安心・安全確保のために、相続の際の資産承継サービスなどを提供してきた。

 また、かつては退職金を金利の高い貸付信託に預ければ、一定の老後が保障されている時代もあったが、今はもっと若い時から、資産形成が必要になっている時代。信託銀行としても、顧客層を広げていく必要があるのだ。

 とはいえ、いきなり広く個人に営業をすると言っても難しい。そこで、企業年金を通じて取引のある企業の従業員、職域を中心にアプローチを進めている。

 ただ、生命保険営業などもそうだが、会社の食堂などでチラシを配り、説明会を開くといったスタイルでは非効率で制約があることが課題だった。

 そこで22年4月にリリースしたのが、スマートフォンアプリ「スマートライフデザイナー」。このアプリは確定拠出年金(DC)の残高を確認できる他、他の金融機関とも連携しているため、自らの資産を統合して、資産・負債のシミュレーションをすることも可能になっている。

「今までは企業年金の取引先従業員の皆さんにDMさえ打つことができなかったが、クリック1つでアクセスできるようになった」。DC管理をしている従業員だけで約165万人いるだけに、潜在的価値は大きい。

 これはDXに向けた取り組みでもある。大山氏は社内で業務効率化を「縦のデジタル化」、事業やチャネルの壁を超える事業横断融合のDXを「横のデジタル化」と呼ぶ。

 これまでも三井住友信託銀行では、各事業のメンバーが擦り合わせをしながら、融合して新たなビジネスを作り続けてきた歴史があるが、どうしても時間がかかる。それがアプリを通じることで、年金事業と個人事業の融合がスピード感を持って実現できた。

「対面営業のビジネスモデルではスケーリングがなかなか難しかった信託銀行の仕事が、DXを使うことで一挙にスケーリングできるようになってきた」

 また、三井住友信託銀行は06年にSBIホールディングスとの合弁で住信SBIネット銀行を設立するなど、ネット銀行にいち早く取り組んだ会社でもある。

 この連携を生かし、23年9月29日から、「三井住友信託NEOBANK」のサービス提供を開始。前出のアプリ・スマートライフデザイナーを経由して口座開設をすることで、住信SBIネット銀行が提供する銀行サービスを受けることが可能。スマートライフデザイナーとの相互導線、ネット銀行のサービスを通じて、新たな資産形成層との接点を持つことを狙う。

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