2023-12-20

三井不動産「神宮外苑再開発」の将来像、「誰もが自由に憩える場所に」

「神宮外苑地区まちづくり」の将来イメージ




意外にも少なかった「憩いの場」

 再開発の大きなキーワードは「スポーツ」。前述の通り、現状の神宮球場、秩父宮ラグビー場はそれぞれ老朽化が進む。これらの施設を段階的に建て替え、「22世紀も『スポーツの聖地』であるために機能を更新することが不可欠」(鈴木氏)。

 例えば、現状の神宮球場は場外の歩行者動線スペース、場内のコンコースともに狭い。プロ野球の試合や花火など、大規模なイベントの際には「人溜まり」ができてしまう構造で、安全面に課題を抱えていた。

 だが、現在の場所で建て替えようと思っても、周囲を2本の道路と隣地に囲まれており、外周スペースがほとんどない。現在不足しているバリアフリー機能などを増設し、歩行者動線などを確保するのは困難だった。そこで、現在の秩父宮ラグビー場、明治神宮外苑テニスクラブがある場所に移転、新築する。

 そして秩父宮ラグビー場も老朽化が進む。こちらは現在の第2球場の場所に移転、新築。ラグビーを中心に、様々なスポーツ、文化イベントを開催する「屋根付き」の全天候型施設に生まれ変わる予定。そしてこれらを段階的建て替えにすることで、競技開催への影響を抑えることを目指している。

 意外だが、現在の神宮外苑はスポーツ施設が密集した状態。緑道などもないため全体の回遊性に乏しく、憩いの場となる広場もない。「閉鎖的」な空間になっていることは否めない。再開発では今回、第2球場をなくすため、その分のスペースを緑の広場とし、「誰もが自由に憩えて、行き来ができる空間をつくることで、神宮外苑の魅力が増していくのではないか」(鈴木氏)。

 そして、この回遊性や広場の確保は「災害への備え」にもつながる。2011年には東日本大震災が東京をも襲ったが、整備される新たな施設とも連携し、「広域防災拠点」としての機能を高めることも、この再開発の大きな目的の1つ。

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