2023-12-20

三井不動産「神宮外苑再開発」の将来像、「誰もが自由に憩える場所に」

「神宮外苑地区まちづくり」の将来イメージ




外苑再開発における明治神宮の事情

 元々、この開発の経緯はどういうものだったか。この神宮外苑地区では、13年6月に地区計画が策定されているが、三井不動産は地区計画区域内に位置する「青山OMスクエア」(08年7月竣工、日本オラクル等が入居)の権利者だった。

 その後、15年4月に東京都と関係権利者6者(明治神宮、JSC、高度技術社会推進協会=TEPIA、伊藤忠、日本オラクル、三井不動産)で「神宮外苑まちづくりに係る基本覚書」を締結し、ここから開発計画の検討が本格的に始まった。

 三井不動産はこれ以降、地権者の同意も得て、再開発の代表施行者となって地権者とともに東京都のまちづくり指針を踏まえながら「神宮外苑地区公園まちづくり計画」を策定。22年3月に都市計画決定告示、23年2月には施行認可を受けた。

 今回の再開発では伊藤忠の本社ビルの建て替えが行われ、地上38階の新たなオフィスとなる。それ以外に地上40階でオフィス、商業施設が入る複合棟A、地上18階でサービスアパートメント、室内球技場などが入る複合棟Bも整備。

 これらの施設に対しても「公園の景観が損なわれる」という批判の声が一部にある。ただ、ビルは国道246号やオリンピック通り沿いに建つ。公園の真ん中にビルを建てるわけではない。「全体の中で適正な位置、ボリューム配分を、我々なりに練りに練って今回の計画に至っている」(同)

 今回、伊藤忠本社以外に建つビル、そして神宮球場、秩父宮ラグビー場の移転・新築は明治神宮にとって重要なプロジェクト。なぜなら、明治神宮は「神宮内苑」を護持し続けるために、外苑の活用によって得られる収入を必要としているから。

 明治神宮は、神宮球場などスポーツ施設の運営、ブライダル施設の明治記念館、内苑のお賽銭、ご祈祷などを収入源としている。このうち、神宮球場からの収入が6~7割を占めると言われている。

 明治神宮には明治天皇と昭憲皇太后が祀られている。神宮内苑は創建時に「永遠の杜」を目指し、日本各地から集めた10万本の樹木が植林された人工林となっている。明治神宮では20年に鎮座100年を迎えたが、「次の100年」に向けて明治神宮全体、内苑の「緑」を護持し続ける必要があるのだ。

 前述のように、神宮球場を段階的な建て替えにするのも、収入が失われる時期を短くするため。また、オフィスビルについても神宮球場、秩父宮ラグビー場の新築で使わなかった容積率を明治神宮が伊藤忠、三井不動産に譲ることで、その対価として開発の負担を軽減しているという意味がある。

 今回の再開発は公的な補助金に拠らない、民間主導の事業。その民間の事業者が連携して公共空間を維持管理するためにも、施設を更新し、事業全体として必要な収益を、持続的に確保していくことが重要。

 施設が完成した後も、防災やイベント、公共空間の維持などに向け、事業者間で連携して「タウンマネジメント」に取り組んでいく方針だ。

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