2024-02-06

三菱UFJフィナンシャル・グループ社長・亀澤宏規「金融とデジタルの力で、分断の時代に『つなぐ』存在になっていく!」

亀澤宏規・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長




「資産運用立国」に向け果たすべき役割は?

 ─ 今、日本政府は「資産運用立国」を目指して取り組んでいますが、ここでどのような役割を果たしていきますか。

 亀澤 国を挙げて、国民の皆さんの資産所得を倍増させようという取り組みになっていますが、我々はそこに向けて運用商品の開発、販売、管理など様々な機能を提供しています。

 総合金融グループとして資産運用立国に貢献しないといけないと考えていますし、皆さんの資産所得倍増に貢献したい。これは責務だと思っています。

 足元で資産運用残高は約100兆円ですが、これを2029年度末までに200兆円に倍増させたい。今、MUFGの下には銀行、信託、証券がありますが、ここに今は信託の子会社である三菱UFJアセットマネジメント(MUAM)を24年4月に直下にして「第4の柱」として力を入れていきます。

 ─ これまでデフレ下で有効活用されていなかった約2100兆円の活用を図るということですね。

 亀澤 ええ。預金が投資に移るところも我々がお手伝いするなど、できれば当社の運用力をご評価いただき、証券会社から商品を買っていただくといった形で、MUFGの中で投資資金が回っていくことも期待しています。

 象徴的なのが「eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)」という商品です。23年4月に純資産総額が4兆円に達したのですが、その後約3カ月で5兆円を突破するなど、爆発的に売れているんです。

 ─ この要因をどう見ていますか。

 亀澤 グローバルな商品に投資する投資信託の中で手数料が日本一安く、預金者が初めて運用する時の投信として選びやすいのだと見ています。今、ブロガーが選ぶ投信でナンバーワンになっているんです。24年から「新NISA(少額投資非課税制度)」が始まっていますが、この商品は大きな武器になります。

 ─ 改めて、「金利が付く時代」が近付いてきていますが、金融グループとして果たす役割をどう考えますか。

 亀澤 銀行の役割はますます大きくなります。ただ、大きく何かが変わるのではなく、今までやってきたことが試されるのだと思います。

 金利がない世界では、単純な貸出よりも、お客様の経営課題に関して、どのようなアドバイスができるかという力が必要でした。例えばお客様の買収やM&A(企業の合併・買収)の提案、ガバナンスの強化、脱炭素に向けた取り組みといった課題に対して対話をし、そこにアドバイスをすることで手数料をいただくといった取り組みを進めてきました。

 今後、金利がある世界になると、今までほとんどなかった調達コストが出てきますから、お客様は事業で利益を出すための事業力を強化しないといけません。よりリスクが高まりますから、そこに我々がどういったソリューションを提供できるか。そして金融の正常化は良いことですが、そこにはリスクも、チャンスもあることをお伝えしていく。この役割が求められるので、まさに力が試されます。

 ─ これまで培ってきた力が試される。ある意味で面白い時代になるとも言えますね。

 亀澤 当社の業績で言えば、営業純益が14年のマイナス金利導入以降、下落を続けていたのですが、先程お話した収益の多様化などもあり、マイナス金利前のレベルに戻ったのです。

 ここから金融が正常化すると、金利収入も加わりますし、これまで培ったお客様との関係もあり、非常に面白い時代を迎えると言えます。ただ、当社がお客様に選ばれない可能性もあります。「あなた方の提案よりも、他社の提案の方が良い」と言われることもあるかもしれませんから、面白いけれども非常に力が試される。やりがいがあります。

 ─ お金のやり取りだけでなくソリューションが重要ということですが、ある意味で「つなぐ」というのは今後のキーワードになりますね。

 亀澤 おっしゃった「つなぐ」は次の中期経営計画のキーワードです。世界的な分断が進み、お客様のニーズは多様化し、働き方も働く場所もバラバラになっている今ですが、そうした状況にデジタルで対応できるようになっています。

 パーソナライズ、つまり1人ひとりに合わせたサービスを提供できるということです。分散、多様化していますが、実は瞬時につながることができるのです。金融は元々、「つなぐ」仕事です。投資家と企業、預金者とローンを借りたい人をつなぐ。今の世代と将来世代、そして国を超えてつないでいく。

 なぜ、我々がつなげるかというと、信用・信頼があるからだと思っています。お金やデータといった大切な資産を預けていただけている存在だと。金融とデジタルの力を使って、分断の時代に「つなぐ」存在になろうというのが次の中計の骨子です。

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