2024-02-06

三菱UFJフィナンシャル・グループ社長・亀澤宏規「金融とデジタルの力で、分断の時代に『つなぐ』存在になっていく!」

亀澤宏規・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長




顧客の挑戦と共に「事業リスク」を取る

 ─ 日本には再生という課題があります。ここにはどのように関わっていきますか。

 亀澤 日本全体のことで言えば、24年はようやくデフレから脱却する年になると思います。日本経済が緩やかに回復する中で、我々の責務は非常に大きいと思っていますから、そこでできることは何でもやらないといけないという思いがあります。

 個人と法人とがありますが、個人は先程お話した資産運用、法人は金利のある世界でリスクを取っていただくためにサポートするのが我々の役割です。

 我々が鍛え続けてきたソリューション力をさらに磨き上げて、お客様がリスクを取りやすくすると同時に、場合によっては我々もリスクを一部取ろうと。

 これまでは銀行として、あまりリスクを取ってきませんでしたが、「事業共創投資」を始めています。例えば、次世代半導体の国産化を目指す会社・ラピダスに投資しました。難しい事業に挑戦しているお客様がおられるのであれば、そのリスクの一部を一緒に取ろうと。

 ─ 銀行法の改正など、銀行グループの事業の幅が広がったことも背景にありますか。

 亀澤 これはイエスでありノーなのですが、わかりやすく言えば、その通りです。銀行法改正による規制緩和で、付随業務の範囲が広がり、柔軟性が高まっています。

 この時にできた「銀行業高度化等会社」を設立して、宇宙開発を手掛ける企業や、デジタル広告事業に投資をするなど事業リスクを取っています。

 個人のお金を預金から、ある程度投資に回してもらう時に、もちろん海外に流れる部分もありますが、日本国内にリスクマネーとして戻ってくると、企業の設備投資資金も個人の資産運用から出ていくという流れをつくることができます。預金を投資に回すことで、日本全体のリスクテイクが進むのではないかと思います。次の中計の3年間は、攻めの姿勢で成長を取り込んでいきたいと思います。

 ─ 改めて、大学院で数学を専攻していた亀澤さんが、金融の道を選んだのはなぜですか。

 亀澤 数学は物事の構造を理解する学問ですから、抽象化や構造理解が大切です。かっこいい言葉で言えば本質を理解することが大事なんです。

 日本という国全体に貢献したいと考えた時に、金融、中でも銀行は経済の血流であるお金の流れで日本経済をつくっていますから、その構造を理解したいと思ったんです。この構造、本質を、変化する時代に合わせて少しでも定義していければ、貢献できるのではないかと。そこに非常に魅力を感じましたね。

 ─ 当時は理系から銀行に入るのは珍しかったのでは?

 亀澤 特に私は大学院まで行っていましたから。担当教官からは「大学院まで行ったのに、なぜ残らないのか」と言われました。当時、学部では7人いた学生の中から2人しか大学院に進めなかったからです。ただ、私は先程お話したように日本に貢献したいと思ったんです。

 21年に当社のパーパスを「世界が進むチカラになる。」としました。私自身としては、会社に入った時の思いを言語化したものですが、大企業に入るとどうしてもみんな最初の思いを忘れてしまいます。私だけでなく、みんないろいろな思いで会社に入ったと思いますから、それを思い出して欲しいという願いも込めています。

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