2024-03-07

田中秀明・明治大学大学院教授「今の社会保険制度は働き方改革を阻害し、正規・非正規の差別を生んでいる」

田中秀明・明治大学大学院教授

「今のままでは日本は『永遠のゼロ成長』です」─こう厳しく指摘するのは、明治大学大学院教授の田中秀明氏。長きにわたる低金利が「心地よかった」日本だが、徐々に金利の付く時代が近づいてきている。ただ、働き方改革などを阻害する要因として「社会保険制度」を挙げる田中氏。政治的にも痛みを伴う改革ではあるが、改革をしなければ「日本は経済成長できない」と訴える。


物価、金利が上がらないと成長できない

 ─ 日本の成長のために財政はどうあるべきか。今後、日本銀行の政策変更が予想されますが、金利が上がると為替は円高に向かいます。その影響で景気が悪化した際、また財政出動という議論になる可能性があります。今後をどう見通しますか。

 田中 日銀は非常に慎重ですから、すぐに金利は上がっていかないのではないかと思います。確かに日銀の植田和男総裁は、方向性としては異次元緩和の解除を目指していますが、これまで日銀は解除が早すぎて失敗したこともあるので、時間をかけて政策変更するでしょうし、仮に上がってもほんのわずかではないかと思います。

 政治に目を向けると、遅くとも2年以内の選挙が見通される中、「バラまきモード」は継続しています。よく「日本の借金は先進国で最悪だ」と言われますが、現時点では、まだ国内貯蓄があるので吸収できます。何かのショックで金利が上がる可能性はあるかもしれませんが、日本が直ちにギリシャのようにはならないと思います。

 こうした状況を支えているのが日銀の低金利政策です。既に物価目標2%を達成しているのに、異次元の金融緩和の解除には非常に慎重です。この状況を端的に言うと「永遠のゼロ成長」です。物価や金利が上がらないのに成長するはずがありません。

「茹でガエル」状態で心地いいわけですが、貯金の利子はゼロ金利で奪われています。低金利でいわゆる「ゾンビ企業」も生き残れます。足元では、円安で輸出企業は潤い、株式市場も好調ですが、今のままでは日本の「ゼロ成長」は続くでしょう。

 ─ そのように、長きにわたる低金利政策で、様々な面で矛盾が出てきていますね。

 田中 その一つが財政悪化です。私は財務省出身ですが、最近は特に「財政再建すべき」とは言わないようにしています。なぜなら、これは、選挙で勝ちたい政治家の合理的な行動の結果だからです。財政規律は重要ですが、財政再建あるいは財政赤字を減らすことが最終目的ではなく、当面の最大の課題は、人口減少や少子高齢化を乗り切ることです。

 2020年間からの50年間で、日本の人口は1億2000万人から8000万人と、4000万人減ると予想されています。問題なのは、そのうち3000万人が15歳から65歳未満の働く世代だということです。

 人口が減れば潜在成長率は下がります。「乗り切る」というのは、国民の生活水準を維持できるかどうかという問題です。乗り切るための方法は明らかで、それは可能な限り、より多くの人が、より長く働くことです。

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