社会で抱きかかえる「産後ケア」の充実を
─ 片山さんは母子保健法の一部改正で「産後ケア」事業を法的に裏付けることに貢献された実績がありますが、改めて産後ケアの重要性をどう考えていますか。
片山 コロナ禍で、不安を抱えておられる妊婦さんも多いと思います。その意味でますます、妊婦さんや産後の方々を、社会全体でゆりかごのように抱きかかえる「ネウボラ」(フィンランド語で「助言の場」の意味)機能が必要だと思います。
ネウボラは、地域で地方自治体が中心となって、妊娠期から子供の小学校入学まで、母親を社会が抱きかかえるように支える仕組みです。地域包括ケアの中で取り組んでいる自治体があります。
産後ケアでは、病室や療養型病床に余裕のある場合にはそこを活用して母胎の回復、心理的な安定を図って、産後うつや虐待がないように心を配ります。お母様が赤ちゃんと向き合う場所で、家事などから切り離されて休むことができることが大きいと思います。
今は生活が苦しい方も多く、自宅に帰った後は子どもと向き合う時間が取れないケースもあります。自費ではなく、そういう方を保護する意味で入ってもらうことがあってもいいのではないかと思っています。
─ 改正法が施行され、産後ケア事業は実施段階に入っているということですね。
片山 そうです。母子保健法の17 条の2に「市町村は、出産後1年を経過しない女子及び乳児の心身の状態に応じた保健指導、療養に伴う世話又は育児に関する指導、 相談その他」という条文を入れており、これを元に病院、診療所、助産所などの施設で産後ケアに関する様々な事業を行うことができます。
課題は財源です。産後ケア事業全体で令和3年度予算の中で42億円しかありません。仕組みの中で宿泊型を推奨していますが、これは空きベッドを抱えた病院を助ける意味合いもありました。ただ、デイサービスやアウトリーチ(現場出張サービス)も取り入れた方が、いろいろな方に広がる可能性があります。
また、今は取り組んだ施設に対して2分の1の補助を出すという形ですが、施設や利用者に対して、さらに何らかのインセンティブを出す必要があるかもしれません。
─ 今は晩婚化が進んでおり、少子化に歯止めをかけるのが難しい状況ですね。
片山 そうですね。実は私も主人(片山龍太郎氏)とは31歳と33歳で結婚しています。全て検査して、健康体であるという結果が出ましたが子どもができないので、私が38歳の時に不妊治療に入りました。
不妊治療の権威の先生に診てもらいましたが、なぜできないのか首をひねっておられました。後でわかったことですが、最大の原因は卵子が老化していたことでした。それが早くわかっていれば、結婚当初に卵子を凍結することもできましたが、当時はそのことを知っている人自体が少ない時代でした。
日本は不妊治療では進んでいる国でしたが、保険適用は菅義偉総理が決断されて、ようやく令和4年度からになります。
─ 治療に関する情報にアクセスすること自体が難しかったわけですね。
片山 卵子凍結の情報は15年ほど前から伝わり始めました。ちょうど私が国会議員になって、官邸の会議に経済産業政務官として出席した際に、当時の安倍晋三官房長官と、経済財政諮問会議の民間議員だったトヨタ自動車の張富士夫さん(現・相談役)に「私はこういう経験をしたので、不妊治療を強化して下さい」とお願いをしました。
その時に私は政治家になったことの影響力を実感しましたが、不妊治療への支援自体がほぼなかったのが、私の発言以降、支援の拡充が進んだのです。これは本当にありがたかったですね。
─ 現在、政府は「こども庁」の創設を検討していますが、どういう考えを持っていますか。
片山 子どものことをファーストに考えるという意味で、非常にわかりやすくなります。日本は少子化が進んでおり、子育てしにくい社会になっている。今の案では私が力を入れてきた子育て支援もこども庁の管轄になりますから、やるからにはいいものにしていただきたいですね。あとは、菅総理の政治決断次第だと思います。