2021-09-28

【政界】脱原発を含めたエネルギー問題や「企業から人へ」の分配問題が焦点に



税制健全化への道筋見えず

 半面、各候補の主張から財政健全化への道筋は見えてこない。

 高市氏は、物価上昇目標2%の達成までは基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を凍結すると宣言した。

 岸田氏も「財政再建の旗を降ろすことはしない」としつつ、コロナ禍のもとで「数十兆円規模の経済対策を早急に取りまとめたい」と述べている。

 河野氏は経済対策の規模には言及していないが、「有事には財政(出動)は避けられない」と理解を示す。

 立憲民主党など野党も経済対策を競っており、衆院選と来年夏の参院選をにらんだ「ばらまき合戦」の様相が強まれば、財政規律はさらに緩みかねない。

 2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」は菅政権ですでに国際公約になっている。

 このため、河野氏は総裁選を前に「まずきちんと省エネをやり、再生可能エネルギーを最大限導入する。それでも足りないところは、安全が確認された原発を再稼働していくのが現実的だろう」と脱原発の持論を軌道修正した。

 しかし、河野氏は原発の新増設には否定的だ。一方、岸田氏は既存の原発の再稼働を優先し、新増設への態度を明確にしていない。自民党のカーボンニュートラル実現推進本部は、新増設や建て替えを求める決議を5月にまとめており、衆院選後、新首相と党の綱引きが始まるかもしれない。

 新型コロナの影響で停滞した外交は仕切り直しになる。9月24日には米国で日米豪印4カ国(クアッド)首脳会議が初めて対面形式で開かれ、菅首相が出席する予定。

 これに先立ち、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は9日、対立が続く両国関係について電話で協議した。動き始めた米中の間で日本がどう存在感を示すか、新首相は早々に外交手腕を試されそうだ。岸田、河野両氏には外相経験があり、岸田氏は最近、半導体確保など経済安全保障にも傾斜している。

 今回の総裁選は派閥単位で特定の候補を推す展開になっていない。それだけに、新総裁には流動化する党内を束ねる指導力が不可欠だ。ご祝儀相場で衆院選を乗り切ったとしても、山積する政策課題への対処を誤れば、次期政権は早晩、混乱に逆戻りする。

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